A's編
第二十九話 裏 (夏希、エイミィ、アリサ)
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て腹立たしく思いながらも、桃花が喜ぶなら、まあ、いいかな、と考えるのだった。
結果から言えば、夏樹のもくろみは成功していた。蔵元翔太という人間は、一度しっかりと向き合って話してみれば、感じのいい人間だ。話しやすいというか、余裕があるというか、そんな空気を持っている。だからこそ、今まで話したくない、同じグループの誰かが嫌っているという理由で翔太を敬遠していたグループが次々と夏樹の派閥に入ってくることになっていた。
さらに思わぬ副産物まで見ることができた。翔太も女の子に対する影響力に懸念を持っていたのか、唯々諾々と夏希に従う翔太だった。それを歯痒そうに見てくるアリサ・バニングスの姿だ。その隣には、微笑みながらものすごい圧力をこちらに向けてくる月村すずかの姿もあったような気がしたが、それは気にしてはいけないような気がした。
月村すずかのことは気にしないにしても、アリサ・バニングスの顔は滑稽だ。
今まで、翔太は、女の子に関しては夏希に丸投げで、大変な時を除いてはほとんど不干渉だった。だが、それでも例外がいた。それがアリサ・バニングスだ。そもそも、一年生のころからアリサに対しては翔太の態度はおかしい。一年生の頃はさりげなくグループを作るように誘導していたというのに、アリサに関しては夏希に直接頼んできたのだから。
夏希とアリサは、性格の不一致から不仲になってしまったのだが。思えば、それが最初の翔太の失敗ではないだろうか。こんなやつ孤立すればいいんだ、と夏希は思ったものだ。確かに夏希がそう思ったのは、アリサの強気な性格的なところもあったかもしれない。だが、それよりも目を引いたのは、金髪と日本人にはありえない白い肌だろう。直感的な部分で、女としての本能的な部分で、夏希は、アリサを敵と認定していたのだ。おそらく、クラスのほとんどがそうだろう。だからこそ、彼女は入学してすぐに孤立していたのだから。
だが、それを翔太だけが気にかけた。彼女だけを特別扱いするように。夏希は、最初からそれが気に食わなかったのだ。どうせなら、桃花を特別扱いしてあげなさいよ、と何度思ったことか。なにせ、今や数少ない保育園のころからの友人なのだから。
だが、今回、アリサの口惜しそうな顔を見ることができて、三年間の積年の思いが思わず笑みが浮かんでしまうほどに少しだけ溜飲が下がる思いだった。
◇ ◇ ◇
エイミィ・リミエッタは、第九十七管理外世界の地球から戻ってきたクロノが何も言わずに黙々とものすごいスピードで仕事を片付ける姿を、自分の仕事を片付けながら横目で見ていた。
傍からみれば、その姿は懸命に仕事を終わらせようとしている執務官の姿だろう。しかしながら、クロノ姿をよく知るエイミィからしてみれば、クロノの今の
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