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リリカルってなんですか?
A's編
第二十九話 裏 (夏希、エイミィ、アリサ)
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ダーとしての地位を獲得した夏希は翔太とよく話す。むしろ、翔太が問題を振ってくることもあるぐらいだ。特に、女子の問題に関してだ。男子の問題に関しては翔太が処理しているようだが。

 男女間を気にするような年齢ではないのだが、翔太だけは異様だった。夏希としても、翔太が片付ければいいんじゃないか、と思う案件も多々あったが、「女の子の話は女の子同士のほうがいいでしょう?」という言葉でごまかされていた。しかし、それは悪いことばかりではなく、夏希のリーダーとしての地位を盤石なものにするのに一役買っていた。

 そんな風に翔太と夏希で男女の役割を分けていたのだが、男女の意識が出てくる三年生ぐらいになって問題が出てきた。つまり、女子の翔太から離脱である。いや、正確には翔太の都合のいい部分だけ利用しようというグループが出てきたことである。表面上は彼女たちのリーダーである夏希が従っているため翔太にも従っているが、まとまりが出てくれば、一気に離反して、夏希をやり込めるかもしれない、というところも出てきた。

 進級したての仲を深める四月に翔太が隣のクラスの高町なのはと仲良くしてたのもそれに拍車をかけていた。

 翔太の最大の強みは、その頭脳もあるが、どちらかというと個別に売っている恩なのだ。『仁』と言い換えてもいいのかもしれない。誰かの世話を焼いて、その恩で人をまとめている。それが蔵元翔太の人心掌握術である。

 もしも、これで翔太がもっと、その場にいるだけで人を従わせるようなカリスマ性―――たとえば、美少年と呼ばれる容姿など――――があれば、夏希もここまで考えなかっただろう。もちろん、ほかの女子に歩調を合わせて翔太をクラスの代表格から蹴落とすことも簡単である。いや、どちらかというと、そちらのほうが楽である。なぜなら、翔太に反旗を翻そうとしている彼女たちは、夏希を担ぎ上げようとしているからである。

 しかし、その思惑に乗らないのは、翔太のことを心配している桃花の存在があるからである。もしも、桃花が何も心配していなければ、夏希は翔太のことなど心配しなかっただろう。

 自分を担ぎ上げようとする女子たちご一行の思惑をのらりくらりと交わしながら、夏希は女子のグループへの翔太の心証を良くする策を考えていたのだが、そう簡単に思いつくものではなかった。

 翔太の特徴は、問題解決能力と公平な価値観と頭脳である。しかし、どれもこれも今更感が強く、売り出すには足りない。何か別の要素がなければ、女子たちが翔太を見直すことはないだろう。翔太が、一応はクラスをまとめている以上、表立った反応はない。しかしながら、水面下では、翔太への陰口なども出ていることを考えると、立て直しは急務だった。

 そして、その機会は、秋の運動会で現れた。

 運動会が終わった後の教室
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