A's編
第二十九話
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「それで、僕たちは何をすればいいんですか?」
クロノさんから詳しい話を聞いた後、僕の中で考えをまとめながらクロノさんに尋ねてみた。
正直、クロノさんから詳しい話を聞いたときは驚いたものだ。まさか、あの本がそんなに危険な代物だとは分からず、しかも、はやてちゃんが、その本の持ち主になっているのだから。だが、驚いてばかりもいられないだろう。クロノさんの話によるとあの黒い本―――闇の書を封印するための手立ては見つかっているようだから。
もしも、時空管理局独力でやり遂げられるなら、クロノさんは僕の元を訪ねてくることはなかっただろう。だが、クロノさんはこうして僕たちの元を訪れた。その理由は、僕たちの力が必要だからだ。もっとも、僕よりもはるかに魔法が上手ななのはちゃんならともかく、僕ができることなんて少ないとは思うのだが。
「話が早くて助かるよ。翔太くんには、できれば僕たちのお手伝いをしてもらいたかったんだ」
「僕ができることならやりますけど……」
僕が先読みしたように口にした言葉に少しだけ驚いた様子を見せていたクロノさんだったが、すぐに調子を取り戻すと、僕に手伝ってくれるように言う。しかし、先ほども考えたように僕にできることは少ないだろう。
クロノさんは、僕のその考えを読み取ったように、いやいやと顔の前で手を横に振って見せた。
「いや、何も君たちに前線に立ってくれというわけではないよ。君にやってほしかったのは、僕たちと八神はやてさんの仲立ちだよ。僕たちのような人間がいきなり行くよりも、同世代で同じ世界の君が仲立ちしてくれたほうが、彼女に不信感や不安を与えないと思ってね」
そこまで言ってクロノさんは何かを思い出したのか、思い出し笑いのようにくくくっ、と笑う。
「どうしたんですか?」
「いや、君が八神さんとすでに知り合いだったことが助かった、と思ってね。君たちが知り合いなんて知らなかったからね。だから、こちらとしても、二人が自然に出会って僕たちを紹介できるようにいろいろと作戦を立ててきたんだ。その内容は、ほとんどエイミィを中心とした女性職員が作ってくれたんだが……」
そこまで言って、もう一度笑うクロノさんに僕は嫌な予感を覚えざるを得なかった。
「見てみるかい?」
「いえ、遠慮しておきます」
すぅ、と差し出した台本のようなものに僕は嫌な予感を覚えて、それを受け取ることを拒否した。本能的な部分で、クロノさんが持っているものは危険だと判断したのだ。
「それがいい。エイミィ曰く、これには乙女の夢とロマンが詰まっているらしいからね」
何とも言えない苦笑で誤魔化すクロノさんだったが、その笑みからは苦々しいものが見えるところから考えても、よっぽどのものだった
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