A's編
第二十九話
[10/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
なのだろう。僕は、保留状態を解除するために通話のボタンを押して、もしもしと、電話口に出た。次の瞬間に電話口から聞こえてきたのは、よく聞く、と言えば語弊があるかもしれないが、聞きなれたアリサちゃんの怒声だった。
『ちょっとアリシアっ! 遅いじゃないっ! いつまで待たせるのよっ!』
「……ごめん、ちょうど僕が帰ってきたから遅くなったみたいだね」
『へ……? ショ、ショウ?』
電話口に出ていた相手が突然、何の前触れもなく変われば、それは戸惑うに違いない。現にアリサちゃんは、電話口の向こう側から聞こえてきた声が、自分が予想していた声とは異なることで、どこか戸惑うような声を上げていた。
「ごめんね、アリシアちゃんが、アリサちゃんが用事があるからっていうから代わったんだ」
『唐突すぎるのよっ!』
うん、僕もそう思う。
僕はてっきりアリシアちゃんが話を通していると思っていたのだが、どうやら思い違いだったようだ。アリシアちゃんが考えていた悪戯のような笑みはこれを意味していたのだろうか。
「ごめんね、アリシアちゃんには言っておくから」
『あ、それは、後であたしからも言うわ』
どうやらアリシアちゃんは、悪戯が成功した代わりに大きな代償を支払うことになりそうだった。アリサちゃんが怒るなら、僕からは軽くでいいかな? と考えてしまうのは、僕がアリシアちゃんに甘いからだろうか。
「それで、用事ってなに?」
『あ、そうよっ! 喜びなさいっ! パパが海鳴アミューズメントパークのチケットを手に入れてくれたのよっ!』
それはすごい、と聞いた瞬間に思った。
海鳴アミューズメントパークは、最近できた遊園地で、海鳴の都会とも田舎ともつかないような場所にできたそれなりに広い遊園地だ。キャラクターで売っているわけではないが、アトラクションが最新のものを使っているらしく、連日人気らしい。ただ、その海鳴アミューズメントパークの特徴として、入場券の一日販売数が決まっているらしい。どうやら、人込みを避けるためらしい。そのため、今はチケットの入手が困難だと聞いている。
「よく手に入ったね」
それが、僕の正直な感想だ。正規のルートで手に入れることは、ほとんど不可能だと思っていたからだ。
『ふふんっ! パパの会社も資金提供してるから、手に入ったらしいわ』
なるほど、株主優待のようなものか。
『しかも、今度の日曜日なのよっ!』
しかも、チケットの指定日は日曜日らしい。平日よりも休日が入手困難なのは間違いない。それを手に入れたということは、デビットさんの苦労も並々ならないものだろう。アリサちゃんが誇るのもわかるような気がする。電話の向こう側だからわからないが、胸を張るアリサちゃん
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ