A's編
第二十九話
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の姿が容易に想像することができる。
『だから、一緒に行きましょうっ!』
なるほど、アリサちゃんの用事というのは、これだったのか。僕を誘うこと。おそらく、アリシアちゃんも知っていたに違いない。だから、笑っていたのか。僕が驚くと思って。そうだとすると、一緒に行く面々は、すずかちゃんを足した四人かな。
ああ、でも、なんてタイミングが悪いんだろう。あと一週間早かったら。もしも、それが今日だったら。僕はうなずくことができたというのに。
「ごめん……その日は、用事が入っているんだ」
正確には一か月ほどずっとだが。
アリサちゃんからしてみれば、僕の返事は予想外だったのだろう。僕が断りの返事をするとしばらく返答はなかった。返ってきたのはたっぷり五秒が経過した後だろうか。
『ショウ、ごめん、あたし聞こえなかったわ。行くわよね?』
「ごめん、用事が入ってるんだ」
僕の返事が信じられなかったようで、もう一度聞いてきた。信じられないのもわかる。普通の用事だったらおそらくそちらを優先してたかもしれないから。だけど、今回のことは何事にも代えられないのだ。だから、こうして返事するしかなかった。
『なによっ! あたしたちと遊びに行くよりも大切な用事なのっ!!』
「……うん、ごめん」
怒らせることはわかっている。わかっているのだが、僕には謝ることしかできない。せっかく苦労したであろうチケットをもって、誘ってくれたのに。それでも、僕には断ることしかできないのだった。遊びと命を天秤にかけることはできない。もしかしたら、はやてちゃんに言えば、気にしないで遊びに行って来いと言ってくれるかもしれないが、それでは僕に協力を頼んできたクロノさんを裏切るようでやりたくはない。
『―――っ! もういいわよっ!!』
その言葉を最後にぶちっ、と向こうからの通話は切れてしまった。最後の怒声は少し携帯から耳を離してもうるさいほどの大音声だったのだから、よほど大きな声で叫んだのだろう。
はぁ……これは、明日はアリサちゃんのご機嫌をとらないとな。
ただでさえ、最近は運動会のこともあって、アリサちゃんとあまり遊んだり、お茶会に参加したりできていないのだ。ひょっとしたら、今までで一番大変なご機嫌取りになるかもしれない。
「―――お兄ちゃん、今のどういうこと?」
―――どうやら、天はとことん僕を見放したようで、アリサちゃんよりも先に対応しなければならない子がいることに改めて気づくのだった。
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