第二部第五章 次なる戦いへの蠢動その一
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だってストレスがたまれば駄目でしょう」
「はい」
「国家もそれと同じ。それを忘れると大変なことになるの」
何処か医者を思わせる言葉である。東はそれを教師から教えられるようにして聞いていた。
「内政でも外交でもそれは同じ。ほら、エウロパだって不満が募っているからサハラに侵攻しているじゃない」
この場合の不満とは人口問題である。
「まあ連合は人口問題は関係ないけれど」
彼等には広大な開拓地がある。その為人口や食糧、資源の問題とは無縁である。
「けれどそれなりに問題があるのよね。それをどうしていくかが政治なのよ」
「そういうものですか」
「そうよ、そう考えればやり易いでしょ」
「まあ」
東は生真面目な性質の持ち主であり何かと複雑に考える傾向がある。
「物事はわかり易いように考える。そうすれば問題について考えるのも解決するのもやり易くなるわよ。ほら、文章だって
わかりにくく書いていたら駄目でしょう」
「それはそうですね」
実際に何を書いているかわからないものを有り難がっているのは愚かである。これは二十世紀の日本において実際にあったことであるが何を書いているかわからない時は思想界のリーダーであったのが普通の文章を書くと凡百の人物に過ぎなかったということが知れ渡ったことがある。いや、この人物は権力欲の塊である醜悪なテロリストを偉大な宗教家と絶賛していたので普通の人間よりも遥かに稚拙で劣悪な知性と思想の持ち主であったのだ。
この時代の文章は官庁の書類においてもわかり易いように書かれている。業務の円滑化及び誰にでもすぐに理解できるようにとの配慮からだ。
「それは徐々に身に着けていけばいいわ。私も時間がかかったことだし」
伊藤は優しい微笑みを浮かべた。この笑みだけでもかなりの支持者を集めている。
「それじゃああとは各国の情報を収集しておいてね。事態の変化があればすぐに私に知らせて」
「わかりました」
東はそう答えると部屋をあとにした。伊藤はそれを見届けるとペンを手にとった。
「さて、と。外交は彼にかなりの部分を任せていいわね」
そう言うと書類にサインをした。
「財政は今のところ問題はないし」
今日本の財政は潤っていた。貿易収支がかなりの黒字なのである。
「あとは軍事かしら」
今日本も軍制改革を行なっている最中である。連合軍に参加すると共に国軍を新たに設立したのである。
この国軍の規模は各国の人口により規制されていた。従ってその役割は治安維持及び連合軍の補助、予備戦力であった。
「これは佐藤君に頑張ってもらわないとね」
佐藤とは日本の防衛大臣である。かってラグビーで身体を鍛えていた筋骨隆々の大男である。
「本当に政治というのは問題が尽きないわね。まるで人間の身体みたい」
彼女はそう言う
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