第二部第四章 二つの戦いその二
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た。
「ふむ、見事だな」
アッディーンもそれを見ていた。
「思ったよりも遥かに見事だ。兵力差をものともしていない」
彼はそれを左翼で見ていたのだ。
「司令、我等はまだ動かなくてよいのですか」
艦長を務めるムラーフが問うた。
「ああ、まだいい」
彼は鷹揚に答えた。
「今は動く時ではない。だが時が来れば」
彼はそこで表情を変えた。
「一気に動くぞ」
それは獲物を狙う猛禽の眼であった。
戦局は完全に膠着していた。サラーフ軍は数に優りながらもアガヌの巧みな用兵と防御によりその優位を活かせてはいなかった。
だがオムダーマンも数に劣り押しきれない。次第に両軍に焦りが生じてきた。
「司令、将兵が苛立ちはじめております」
それはアッディーンも承知していた。
「まだだ、まだ動いてはならない」
彼はそう言った。将兵はその言葉に従い落ち着きを取り戻した。
だがサラーフは違った。数に優っているが故に次第に苛立ちを隠せなくなってきていた。
「おい、このままでいいのか」
次第に将校達の間でもそう囁かれだした。
「機を逃すとまたアッディーンにやられるぞ」
彼等はアッディーンの軍略を怖れていた。その為一気を勝負を着けたかったのだ。
だがそれは出来ていなかった。戦いは膠着状態に陥っていた。
次第に突出する艦が出て来た。しかしアガヌはそうした艦から沈めていった。
「段々統制がとれなくなってきたな」
アッディーンはそれを見て言った。
「もうすぐこれが全体にまで及ぶぞ」
彼の言葉は的中した。やがて敵の両翼が突如として突撃を開始した。
「よし、今だ!」
彼はそれを見て叫んだ。
「今から敵の右翼を叩く、主力部隊は左翼に備えよ!」
彼はそう言うと右手を挙げた。
「勝機は来た、この戦い我等がものだ!」
右手が振り下ろされる。同時に彼が直率左翼部隊が動いた。
「よし、遂にはじまったな」
その中にはコリームアが率いる艦隊もあった。
「司令に続くぞ、我等の動きを見せてやれ」
彼は幕僚達に言った。そして疾風の様な動きで敵に向かっていった。
アッディーンとコリームアが率いる部隊は闇雲の突撃してきた敵右翼の矛先をかわした。そしてその側面に回り込んだ。
「撃て!」
アッディーンの右腕が振り下ろされる。その攻撃により敵右翼の動きが止まった。
「今だ、突撃せよ!」
そして突撃を敢行する。彼は自らの旗艦を真っ先に突入させた。
「遅れるな、続け!」
この行動に皆奮い立った。そして彼に続き敵に向けて雪崩れ込んでいく。
サラーフの右翼は瞬時にして崩壊した。左翼はアガヌの巧みな防御の前にその動きを完全に止められていた。その動きを見逃すアガヌではなかった。
「敵左翼に火力を集中させよ!」
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