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星河の覇皇
第二部第三章 魔王その三
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「見たところ敵は撤退に取り掛かっております」
「本当か!?」
 これにはモンサルヴァートも驚いた。
「はい、これを御覧下さい」
 彼女はモニターを映し出した。そこには北方諸国軍が映っている。
「ううむ」
 見れば彼等の動きがおかしい。何か後ろに向かおうとしている。
「それだけではありません。よく御覧下さい」
 しかも陣地に何かを置いていこうとしている。機雷や無人砲座、その他の多くのトラップ等だ。
「退く時にも損害を与えようというつもりか」
「そのようです」
 彼女はモニターを見上げながらその美しい眉を顰めていた。
「ここは慎重に進むべきかと。補給線も長くなりますしトラップのこともありますし」
「そうだな。仕方ないか」
 彼は元々正面から大軍がぶつかり合う正規戦が好きなのである。そして戦いは短期決戦が信条であった。
 その彼にしてみればこういった補給線を厳重に守りながら少しずつ進んでいく戦いは性に合わなかった。だが好まないからといって必要に応じ作戦を変更しないような愚かな男でもなかった。
 彼は補給線を確保したうえで敵の撤退を確認し慎重にそのあとを追った。そしてトラップを少しずつ除去しつつ前に進み次の陣を組んだ。わざわざ守りに適した地を選んだうえでのことである。
「今度もまた厄介な場所にいあるな」
 北方諸国軍はエマムルド星系の一番外側の惑星のリングの中に布陣した。そこは隠れるのに適していた。
「誘き出すか」
 モンサルヴァートは苛立ちを覚えて集めた提督達に対して言った。
「それでしたら私が」
 早速ニルソンが名乗りをあげた。
「いや、卿は止めたほうがいい」
 ジャースクがそれを制した。
「何故だ、私に何か不満でもあるのか!?」
「不満とかそういう問題ではない。向いていない」
 ジャースクは激昂しようとするニルソンに対して言った。
「いや、はっきりと言わせてもらうとそうした行動は今は控えたほうがいい」 
 ジャースクはそう言うとモンサルヴァートに向き直った。
「閣下、ここはそうした行動は慎むべきかと存じます」
「意味がないか」
「それだけではありません。無駄な損害を出す怖れもあります」
「そうか」
 彼はそれを聞いて考えをあらためた。
「よし、それでは誘き出すのは止めだ。だが彼等を倒さずしてこの星系は手に入らないぞ」
「はい、それは敵もよく承知でしょう」
「だからか。我々との戦いを避けているのは」
「そうでしょうな。彼等は負けなければこの星系を守れるのです。しかし我々は・・・・・・」
「勝たなければならない、絶対に」
「そうです、心理的にこの差は非常に大きいものです」
 ジャースクはそう言い終えると頭を垂れた。
「それがわかっているから余計に正面からの衝突を避けるか。そして
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