第二部第三章 魔王その三
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然ながら」
「そうだろう、故郷に残してきた両親や恋人のことが気にかかる。絶対に生きて帰りたいと思うだろう」
「はい」
「そういうことだ。彼等に伝えておけ。戦って勝つのと戦わずして勝つのとどちらがいいとな。答えは決まっているだろうが」
「わかりました」
その将校は敬礼した。そしてシャイターンのもとを退いた。
以後この状況に対して不満を漏らす者は大きく減った。そしてシャイターンの指示の下エウロパ軍と対峙を続けた。
その間にもエウロパ軍に対する襲撃や様々な謀略は続けられた。モンサルヴァートもそれには頭を悩まされていた。
「こうした戦い方も確かにはあるが好きではないな」
彼は不快感を露わにしていた。
「将兵の士気も落ちている。どうやら戦局は次第に我が軍にとって不利となりつつあるようだな」
彼は次第に撤退を考えるようになった。それを見抜かぬシャイターンではなかった。彼は各国の政府首脳にひそかにエウロパと講和するよう促していた。
「今講和することができれば貴方達の功績になりますよ」
という言葉も忘れなかった。
やがて戦局不利を悟ったエウロパ総督府は撤退を決定した。軍をエマムルド星系から退かせた。
「これでエマムルドは救われましたね」
各国の提督達はシャイターンを囲んで口々に言った。
「一時はどうなることかと思いましたが」
「戦わずして勝つ、ですな。お見事です」
だがシャイターンはそれに対して口を開かなかった。本心からの言葉ではなく世辞であると見抜いていたせいもあるが他のことも考えていたのだ。
「これで終わりだと思われますか?」
彼はふと居並ぶ提督達に対して問うた。
「?はい」
彼等は暫しきょとんとしたがそう答えた。
「また来ますよ、新手が」
「新手ですか?エウロパは撤退しましたが」
「今サラーフ軍が不穏な気配を見せております」
「サラーフがですか!?まさか」
否、一部の国にはそれは容易に想像がついた。サラーフはサハラ北方への進出の機会を常に窺っていたのだ。
「今こちらに大艦隊を向かわせる計画を進めているという話です」
「本当のお話ですか、それは」
提督の一人が疑問を述べた。
「ブーシルで敗北したばかりだというのに」
彼等はブーシルにおいてアッディーンの艦隊に大敗北を喫したのだ。
「だからこそ侵攻を決意したのでしょう」
シャイターンは言った。
「ブーシルでの敗北はただの敗北ではありません。ミドハドへの介入の機会も失った戦略的に大きな敗北です。それの埋め合わせ、そして敗戦の批判を打ち消す為には」
「それ以外の地を獲得し、勝利を収めるということですか」
「そうです」
シャイターンは彼等の言葉に頷いた。
「それが出来なければ政権の崩壊に直結しますしね。只でさえ王室や国
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