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星河の覇皇
第二部第三章 魔王その二
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た。
「北方だけではない。いずれサハラの全てが私のものとなる。それはいつも言っていることだろう」
「はい」
「だが北方を手中に収めるのはまだまだ先のことだ」
 彼の言葉は果たして何処までが真で何処までが嘘なのか、凡人には理解し難かった。だがハルシークにはよくわかっていた。
「まずは土地の基盤を持たなくてはな。父上のバックだけでは心もとない」
「はい」
「私自身がここに根付く必要がある」
「それにはどうお考えですか?」
「ハルーク家との縁組を考えているのだが」
「ハルーク家とですか」
「そうだ」
 ハルーク家はこのサハラ北方一の富豪である。鉱山を数多く保有しておりサハラ全土でもその富は屈指のものである。今は当主が世を去り彼の年老いた未亡人が当主代行を勤めている。
「あの家と結び付くことができればその基盤は確固たるものになる。そしてそれからの動きが楽になる」
「ですがその為にはまずは」
「この戦いに勝たなくてはならない、と言いたいのだろう。それは既に決まっている」
 彼はまたもやその悪魔的な笑みを浮かべた。
「私が勝つということがな」
「左様でしたな」
 ハルシークもそれに頷いた。
「今度の戦いは楽ではないか。引き分ければそれでよいのだからな。このエマムルドを守ればいいだけなのだからな」
「そういうお考えでしたか」
「私は常に最短で最良の計画を立案し実行する。その為の手段は選ばないだけでな」
 やはりその笑みは何処か悪魔めいている。これは彼のそうした性格によるものなのだろうか。
「だがハルシークよ」
 彼は表情を真摯なものとした。
「問題はそれからだ。どうやって私がここで権力を握るか」
「婚姻の後ですか」
「そうだ、まずは邪魔になる人間をリストアップしておけ」
「わかりました」
「その連中を全て消すのだ。私の邪魔をする者には死を以って消えてもらう」
 冷徹な声であった。そこには感情はなかった。
「言っておくがハルーク家の人間であってもだ。いや、ハルーク家の人間は他にも増して厳重に調べろ」
「はい」
「それから次の計画に移る。邪魔者を全て消した後で」
「それからサハラ北ですか」
「それはわからないな」
 シャイターンの口の端が歪んだ。
「モンサルヴァート提督の下にも刺客を送っておきたいがな。だが彼は切れる男だ」
「あまり期待はできませんか」
「そういうことだ。もし成功してもエウロパには切れ者が多いしな。そうそう容易には攻められまい」
「ではまずは彼等を凌駕する勢力を築かれると」
「それが先決だな」
 そう言うと酒を再び口に含んだ。
「狙い目は何処になるかな」
「そうですな・・・・・・」
 ハルシークは問われて考え込んだ。
「サラーフなど如何でしょうか」
「サラーフか」

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