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星河の覇皇
第二部第二章 狐の登場その一
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男だ」
「よりにって、というものです」
 二人は顔を顰めた。
「しかしあの男は艦隊戦には強いがゲリラ戦はどうなのだ?」
「今のところは何も。ただ宇宙海賊との戦いは見事だったようですが」
 カッサラ周辺の海賊掃討の情報は彼等にも届いていた。
「未知数というわけか。しかしオムダーマンの特殊部隊は手強いからな」
「はい、どのみちハルドゥーンにはより一層のテコ入れが必要です」
 ハルージャは言った。
「特殊部隊はそうして逐次潜り込ませていくか。ところで艦隊の方だが」
「はい、今二個艦隊をあちらに向かわせようと計画しています」
「国境にいる艦隊と合わせると三個だな」
「はい、ブーシルでハルドゥーンが蜂起した後隙を見て一気に侵攻させます」
「そしてそこからミドハドに入りハルドゥーンをハルツームに戻してやると」
「後は我々の傀儡政権です。思う存分こき使ってやりましょう」
「そこまで上手くいけばな」
 サレムはそれにはいささか懐疑的であった。
「さっきも言ったがあの男は狡賢い。それに向こうも我々を利用しようと考えている」
 元々そういった同盟である。オムダーマンの勢力が伸張した為互いに接近し敗れた後も彼等に対抗する為そうして兵を送ったりしている。ハルドゥーンとサラーフは完全に打算によって結び付いている関係であった。そもそもついこの前までは不倶戴天の敵同士であったのだ。
「それはお互い様ですけれどね」
 政治とはそうしたものである。
「実際には傀儡政権ではなくそのままミドハドを併合してもいいと思うのだがな」
「そうはなさらないのですか?」
「したいのだがハルドゥーンと約束してしまった」
「密約でしょう?破棄すればよろしいかと」
「陛下がお許しになられぬ」
 何だかんだ言ってこの国では国王の存在は無視できない。サラーフ国王は信義を破ることを好まなかった。それは国家の信用を落とすことになるからという理由からであった。
「陛下が。それは仕方がないですな」
「うむ。だがその後であの男がまた汚い手を使えば話は別だ」
「その時は何の躊躇もいりませんな」
「そういうことだ。では艦隊と特殊部隊は頼んだぞ」
「わかりました」
 こうして二人は会議室を後にした。そして暫くしてアルフフーフから二個艦隊がブーシルとの国境に向けて出撃した。

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