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星河の覇皇
第二部第一章 策略その二
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カーやベースボールはある。細かいところは千年も経ているのでかなり違ってきているが。
「今は彼等の状況と地形を知ることの方が先だ。そして外交だ」
 ここで彼はプロコフィエフに顔を向けた。
「参謀総長」
「はい」
 彼女は落ち着いた声で答えた。
「卿はどう考えるか」
 彼女はその問いに対してその落ち着いて澄んだ声で話しはじめた。
「彼等が結託すれば確かに大きな勢力になります。おそらくその背後にハサン等が加わり我々にとって侮り難い勢力になってしまうかと」
「ならばすぐにでも」
「まあ話は最後まで聞け」
 モンサルヴァートはニルソンを窘めた。
「ハッ」
 彼女は話を続ける。
「ですがそれは確固たる連合になった場合です。一つ一つではさしたる脅威ではありません」
「ふむ」
 モンサルヴァートも提督達もそれはよく理解していた。
「よってこの場合まずは外交戦略により互いを対立させることがよろしいかと思います。そうすれば彼等は小勢力の集まり、一国ずつ倒していくのは比較的容易であると存じます」
「成程、外交で分裂させた後に各個撃破というわけか」
「はい」
「戦略の基本だな」
 モンサルヴァートはそれを聞き終えて言った。
「だがそれが一番いいな。よし、マールボロ閣下にそう進言しよう」
「お願いします」
「まずは同盟の動きを潰す。動くのはそれからだ、いいな」
「ハッ!」
 プロコフィエフと提督達はその言葉に対し敬礼した。モンサルヴァートはプロコフィエフの提案を彼女の名でそのままマールボロ提督に進言した。
「ふむ、流石はエウロパ軍きっての才女だけはあるな」
 彼はそれを聞いてニコリと微笑んだ。
「はい、私もそう思います」
 モンサルヴァートも彼に同意した。
「では本国の外交部と情報部にはそう打診しよう。すぐにスタッフが来るぞ」
「はい」
「彼女もこれに参加してくれるのだろうな」
「当然です」
「ならば良い。スタッフに美しい花がいるのは実にいいものだ」
 彼は頷きながら言った。
「私の妻と愛犬よりは落ちるがな」
「閣下、それは違うのでは」
 彼はそれを否定しようとした。
「ジョークだよ。私の国での嗜みだ」
 彼の国イギリスでは昔からウィットに富んだジョークが好まれる。これを解し操ることは知性のステータスシンボルの一つであり紳士としての嗜みであった。
「そうなのですか」
 モンサルヴァートの国はドイツである。昔からジョークには疎い。音楽や哲学に重きを置く。こうした文化風土はそうそう変わるものではなくいまだに残っていた。
「花といっても棘のある花だ。知性という棘のな」
「はい」
 これはわかった。今回の戦略においても彼女の存在は不可欠である。その洞察力と分析、状況判断力は大きな力になるだろう。

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