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星河の覇皇
第二部第一章 策略その一
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す」
 緑の瞳に金色の豊かな髪を持つ女性が答えた。
 見ればかなりの美貌の持ち主である。細長く形のいい顎を持つ整った顔立ちをしている。肌は白くまるで雪のようである。そして唇は薄く色は紅である。古の北欧の愛の女神フレイアの様な美貌である。
 その官能的で整った肢体を赤と黒の軍服で包んでいる。ズボンからでもそのスラリとした脚がわかる。
 彼女の名はエレナ=プロコフィエフという。エウロパ軍の中将にしてサハラ北方のエウロパ軍の参謀総長でもある。
 さる侯爵家の長女として生まれた。彼女の他に子はなく彼女は幼い頃より家の当主となるべき教育を受けた。この時代は相当保守的な家でも女子が家を継ぐ事を認めていたのである。
 士官学校に入り入学当初からその秀才ぶりを高く評価されていた。そして首席で卒業し参謀畑を歩んでいった。参謀本部等においてもその切れ者ぶりを遺憾なく発揮し瞬く間に昇進していった。そして先月このサハラのエウロパ軍に配属されたのである。冷静沈着にして広い視野を持つ人物として軍部では極めて評価が高い。
(私はさして女性に興味があるわけでないが)
 モンサルヴァートは彼女を見ながら思った。
 彼は特に女好きというわけではない。かといって男色家でもないが。普通に親同士が幼い頃に決めた許婚がいる。彼女はドイツの伯爵家の令嬢だという。彼はかっての名家とは爵位は持っていた。伯爵である。だから釣り合いのとれた婚姻であった。エウロパでは貴族制度が残っていた。これは容易には消せるものではなかったのである。
(やはり軍部で評判になるだけはあるな)
 それ程彼女の美貌は際立っていた。彼女はこのサハラの軍でも評判になる程の美貌であった。しかし彼女に声をかける者は実はいない。
「あれだけ完璧だとね」
 というのが理由だ。美貌の上に頭脳明晰、家柄もいい。隙がなさすぎるというのだ。人間とは完璧なものは案外好まないものなのである。
 人間的にも悪くはない。部下に優しく自分に厳しいと言われている。実際に彼女を慕う部下や士官学校の後輩は多い。
(まだ二十代後半だというがな。そのわりには人間ができている)
 そろそろ身を固めては、と言われる歳である。だが彼女はそれに対しては微笑みと共に断りを入れる。噂によると彼女も許婚がいるらしい。
(貴族の家にはよくあることだがな。結婚というものは元々は家と家を結ぶつけるものであったし)
 これはどの国においてもそうであった。とりわけエウロパは現在オーストリア王家として復活しているハプスブルグ家に代表されるように政略結婚が盛んであった。貴族達は常に家と家を結び付ける為に互いに婚姻を結んでいたのだ。
「士気の問題か」
 モンサルヴァートは軍事のことに思考を戻した。そして彼女に対して問うた。
「はい。三度に渡る敗戦によりミドハド軍
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