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星河の覇皇
第一部第七章 壁と鉄槌その四
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軍門に降りましたな」
 バヤズィトはアリーの艦橋においてアッディーンに対して言った。その顔は勝利でほころんでいる。
「おそらくな。だがまだ油断はできない」
 彼はまだ顔を緩めてはいなかったのである。
「首都は容易に手に入るだろう。問題はそれからだ」
「問題といいますと」
「主席のハルドゥーンだ。あの男は中々老獪だぞ」
 彼はどうやらハルドゥーンが何かしてくると考えているようだ。
「ゲリラ活動等ですか」
「その可能性も高いな」
 彼はバヤズィトの言葉に対し硬い表情のまま頷いた。
「首都は大人しく明け渡すだろうがな。おそらく故郷に帰りしつこく抵抗する筈だ」
「確か彼の出身地はブーシルでしたね」
「そうだ。ミドハドで二番目に大きな星系だ」
 ミドハドで最も大きな星系は首都星系である。ブーシルは土地も肥え資源も豊富な為首都星系の次に人口が多い。
「あの星系の首長はハルドゥーンとは密接な関係にあるしな。それに」
「あそこはサラーフと境を接していますね」
「そうだ」
 アッディーンはその言葉に対し頷いた。
「下手をすればサラーフが介入してくるぞ。彼等は今までミドハドとは犬猿の仲だったがな」
「近頃我等に対抗する為に接近しておりましたな」
「だからこそ警戒するのだ。今までは我等とミドハドの戦いを静観していたのだろうが」
「大局が決した今すぐにでも動きかねませんね」
「うむ。ブーシルに来られては後々面倒なことになるぞ」
 アッディーンは顔を顰めて言った。
「それだけは阻止しなくてはなりませんね」
「考えられるのはハルドゥーンがブーシルに臨時政府なり何なりを設立することだ。そしてそこにサラーフが彼等を助けるという名目で介入してくる」
「よくある話ですね」
「このサハラでは特にな。だからこそ警戒しなければならない」
 そこでシャルジャーがやって来た。
「司令、只今首都から司令に通達がありました」
「通達?何だ?」
 彼はそれを聞いて顔をシャルジャーに向けた。
「これをお読み下さい」
 シャルジャーはそう言うと一枚の書類を彼に手渡した。
「うむ」
 彼はそれを手に取った。そして封を切り読みはじめた。
「俺も大将になったか」
 彼は表情を変えず頷いて言った。
「えっ、大将ですか!?」
 艦橋にいた者はそれを聞いて皆ざわめきだった。
「特に驚くことでもないだろう」
 彼はそれに対し取り乱しもせず驚くこともなく応えた。
「何を言われるのですか、大将といったら凄いですよ」
「そうですよ、しかもその若さで」
 大将はオムダーマン軍においては元帥、上級大将に次ぐ地位である。その権限は中将と比べても比較にならず軍の最高幹部の一人と言っても過言ではない。
 しかもアッディーンはこの時まだ二十一歳である。そ
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