第一部第七章 壁と鉄槌その二
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アッディーンはシンダントの言葉に対して微笑んだ。
そしてオムダーマン軍はアッディーンの指示通り動いた。そしてミドハド軍へと向かった。
一方ミドハド軍はケルマーン星系の恒星ケルマーンを背に布陣していた。アッディーンの得意とする後方からの奇襲を避ける為だ。各惑星に索敵を徹底させ自らはそこで迎え撃たんとしていた。
「話は聞いている。見事な戦いだったそうだな」
ミドハド軍の艦隊司令はアガヌに対し声をかけていた。サルチェスの戦いから逃げ延びた艦隊の司令は中将、彼は大将であるので艦隊の指揮は彼が執ることになっていた。
「いえ、私は何もしておりません」
アガヌはそれに対して謙遜して言った。
「そんなことはない。貴官のおかげで多くの将兵が戦場から無事離脱することができた。これは貴官の功績だ」
「有り難き御言葉」
「これからの戦いでも期待しているぞ。ここで食い止めなければジャースクにいる我が軍の主力に危機が訪れるからな」
「ハッ」
今ミドハド軍は恒星を背に防御を固めている。前方及び側方、そして上下の監視は怠っていない。
「相手はアッディーン中将だ、気は抜けないぞ」
「はい」
「おそらく今度も何かしてくるだろう。警戒を怠ってはいけない」
「そうですね」
アガヌはその言葉に対し同意した。だが心の中で一抹の不安覚えていた。
「司令、御言葉ですが」
「何だ」
司令は彼の言葉に対し顔を向けた。
「ここで布陣するにしても通信や識別信号は消され、場所を変えられた方がよろしいのでは?」
「オムダーマンに我が軍の存在を知られない為にか」
「はい」
アガヌは頷いた。
「その必要はあるまい」
だが彼はそれに対し首を横に振った。
「敵はおそらくここに向かって来るだろう。我々はそれを迎え撃てばいい。それに彼等が幾ら姿を消そうが我々のこの監視網の前には逃れられまい」
「そうでしょうか」
残念なことにこの司令はオムダーマン軍の艦艇の隠蔽能力を甘く見ているところがあった。そしてアッディーンの能力も少し甘く見ていたかも知れない。
「我々は必ず彼等の存在を掴む。そして臨機応変に対処するだけでよいのだ」
「つまり防御に徹すると」
「そういうことだ」
司令はそう言うと強く頷いた。
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