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星河の覇皇
第一部第七章 壁と鉄槌その二
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ですね、軍を動かせるようになるのは」
「そうだな、今はこれまで通り宇宙海賊の掃討しか出来ない。だが当面はこれでいい」
「はい」
「問題はその後だな」
 彼はそう言うと考える目をした。
「さて、この連合軍がこれからどう動くかだ」
 彼はそこで言葉を止めた。そしてその手にする書類の決裁をはじめた。

 舞台はミドハドに移る。サルチェス星系を手中に収めたアッディーンの艦隊は彼の言葉通りケルマーン星系に向かっていた。
「敵艦隊の情報は?」
 彼は情報主席参謀であるシャルジャー大佐に尋ねた。
「ハッ」
 痩せて学者のような風貌の人物である。三十代半ばであろうか。軍服よりは地味なスーツの方が似合いそうである。彼は司令の問いに敬礼をした後で答えた。
「ケルマーン星系に一個艦隊が確認されております」
「やはりな。そして今どうしている?」
「只今サルチェスより撤退した艦隊と合流し我が軍を待ち受けているようです」
「ふむ。おそらく彼等は予備戦力だったのだろうな。ジャースク辺りで行なわれるであろう戦いの為のな」
「そうであると思われます。そして我々への備えの意味もあったかと」
「そして今その備えになったというわけか」
「計らずもそうなったと言えるでしょう」
 シャルジャーは答えた。
「彼等を破りケルマーンを手に入れたなら友軍の大きな援護になるな」
「そうですね。敵の主力は後方を脅かされるのですから」
「今我が軍の主力は何処に展開している?」
「ジャースクに今入ろうとしていると思われます」
 鋭利な風貌の男が答えた。二十代後半であろうか。シャルジャーよりも長身である。
「ふむ、作戦参謀はそう見るか」
「はい」
 彼はアッディーンに対し答えた。
「ではシンダント大佐、貴官はジャースクでの敵の動きはどう予想するか」
 アッディーンはその作戦参謀の名と階級を呼んで尋ねた。
「おそらくはすぐに攻撃を仕掛けてはこないと思います。我が軍の主力の様子を見るかと」
「そうか。こちらに兵は向けては来ないと見るか」
「はい。ケルマーンにいる戦力だけで太刀打ちできると考えているでしょう」
「だろうな。数のうえから言っても」
 アッディーンは考える目をして言った。
「ケルマーンにいる艦隊もすぐには動かないでしょう。防御を固めているかと思われます」
「そして主力同士の戦いが終わった後に我等を叩く」
「おおよそはそう計画していると思われます」
「だが計画は計画だな」
 アッディーンはここで不敵に笑った。
「ケルマーンの敵艦隊の位置は確認できるか」
「はい」
 シャルジャーは答えた。
「よし、ならば我が軍は今より全ての交信を途絶する。そして識別信号も出すことを禁じる」
「ということはまさか」
「そう、そのまさかだ」
 
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