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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第三十話 国家安全保障談合
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いる。
――そうなんだよな。なんやかんやで皇都で陰険な事をやっている将家はすでに導術アレルギーから脱却しているものも多い、オッス,オラ極右な守原ですらチャキチャキ使っているのだから金銭・権力が絡めば利便性を重視するのは階級に関わらないって事だ。
 内心、肩を竦めながら馬堂中佐は苦笑して諌める
「面倒と云っても金と違ってすりつぶした人的資源は回復するのに十年以上掛かりますからな。労働力をすりつぶすのは戦争である以上仕方ないですが、国力を衰退させ、恨みだけ買ってまた殴りかかられるなんて事になったら最悪です。人口から考えれば同じ百人死んでもあちらが用意できる代わりと此方が用意できる代わりの回数が違いすぎますからな」

「正直なところ、戦術的面での軍政に関する話になってしまいますが、自分の職分と北領で感じたことにおいてはこういった類の工夫を凝らして粘るしかないと思います。
連中の弱点は脆弱な兵站です、長期的に消耗を強いれば先に悲鳴を上げるのはむこうです」

「分かっているさ、だが貴官も先ほど言っていた通り、動員可能兵力の違いも踏まえて慎重に吟味しなくてはならんだろう。
これを貴官に云うのは馬鹿げた話だが、君が北領で示した防御戦の最大の要因は気温、河川等の地形の利用そして〈帝国〉軍が陥った兵站状況の悪化に拠るところが大きい。
防御陣地と導術利用の効果を否定する事はできないが、あれ程の戦果を再現するのは〈帝国〉軍が何も対抗策を練っていないことを前提にしても不可能だろう――と鞍馬が云っていた」
 安東派の軍監本部戦務課参謀の名を最後にぽつり、と付け加えきまり悪そうに頬を掻いた
「無論、逆にこちらが戦力を完全にすりつぶしてからの講和が完全な屈服へ至る道でしかないのもまた事実であり、そのあたりの見極めが非常に重要なものとなるでしょう」

「その為にも細工は流々、厭わず使え、か。先立つものがあれば良いのだがな先立つものが有れば。
唯でさえ導術要員は少ない上に引っ張りだこだ。工廠増設は私も推し進めているのだが既存の鉱山設備の充実もある程度並行して行うべきだろうし稼働するには時間がかかる」
 海良も真顔で答える、さすがに東州の復興に携わっただけあり、そうした点については知識を持っているようであった。
「うむ、その点については断然同意しよう、というかもう少し人件費を回してくれたら美奈津であんな醜態をさらさずに済んだのだがな――本当に」
 心なしか肩を落としながら防諜機関を牛耳っている堂賀が溜息をついた。
「正直なところ、我々にとっても鎮台の維持も結構厳しいからな。特に東州はそうだっただろう?」
西原大佐はそういって安東家の代表者へと視線を送る。
 治安の悪化への対策の為にも鎮台の編制と同時に生活基盤の再構築を行わなくてはならなかったからこそ、
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