第一部第六章 疾風怒涛その一
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疾風怒涛
アッディーン率いる艦隊はカジュール方面から進撃していた。今のところ敵艦隊の情報はなく進撃はすみやかなものであった。
「敵の情報はまだないか」
アッディーンは艦橋にて問うた。
「はい、今のところは」
艦隊の主席参謀であるラシーク中佐が答えた。切れ長の瞳を持つまだ二十代後半の若い将校である。彼はこの作戦の直前にこの艦隊に配属されたばかりである。若いながらも優れた洞察力を持つことで知られている。
「おそらくこちらに来ていると思われますが」
「だろうな。我々を放っておくとは思えないしな」
アッディーンはそう言うとモニターにミドハドの地図を映させた。それはホノグラフィーで浮かんでいる。
この地図はカジュールで手に入れたものである。今はオムダーマン軍全てに行き渡っている。この地図が今回の作戦の計画及び立案に多大な貢献を果たしたことは言うまでもない。
「そうだな」
アッディーンはその地図を見ながら言った。
「おそらく敵艦隊と遭遇するのはサルチェス星系になるだろうな」
サルチェス星系はビスクラから二つ向こうの星系である。小惑星や衛星が多い。
「サルチェスですか」
「ああ」
アッディーンはラシークに対し答えた。
「おそらくそこで遭遇する。規模は・・・・・・多分こちらより多いな」
「でしょうね」
これはラシークも察していた。
「おそらく二個艦隊程か」
それは見事に的中していた。
「分艦隊の司令官達を集めてくれ」
彼は側にいるガルシャースプに対して言った。
「了解しました」
ガルシャースプはその言葉に対して敬礼した。そしてすぐに各分艦隊の司令達が旗艦アリーに集められた。
「よく来てくれた」
アッディーンはいささか形式的ながら彼等に挨拶をした。
この艦隊には四人の分艦隊司令がいた。数字により四つの分艦隊に分けられている。
第一はスライマン=アタチュルク、濃い顎鬚を生やした筋骨隆々の大男である。古くから艦に乗り込む歴戦の武人である。
第二はハルーン=ムーア。痩せた顔付きの男で切れ者として知られている。
第三はユースフ=コリームア。やや小柄ながら筋肉質である。用兵の速さで知られる。
第四はバイバルス=ニアメ。整った口髭を持つ美男子である。若き名将と謳われる。
この四人がアッディーンの艦隊の分艦隊司令である。皆アッディーンがその目で見て自分の艦隊に入れたオムダーマンでも名の知られた者達である。
彼等はアッディーンに対して敬礼した。アッディーンはそれに敬礼で返すと話しはじめた。
「ミドハドの動きだが」
分艦隊の司令達も幕僚達も黙って聞いている。
「今はバルガ星系にいるそうだな」
「ハッ」
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