穏−持病=エロ要素なんて一つもない普通の日常です。
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そんなくだらないことを考えている間に、いつの間にか蔵の前へ。
うし、とりあえず仕事すっか――――――――――
「穏? 入らないのか?」
「…………雹霞さんに、お願いしてもいいですか? 私はここで待っておきますので……」
何故か入口の前でしゃがみこんでいる穏。というか……お前が頼まれたんだろうがよ。
まぁ無理強いするのは教育上よろしくない。理不尽を感じつつも、俺は一人で蔵の中へと向かった。
「ほへー……相変わらず広い部屋だなぁ……」
上下左右に敷き詰められた書物の山。古今東西大陸の全ての知識が、ここに詰まっているかのようだった。
「……おっと、ボーっとしている場合じゃねえや。さっさと探さねぇとな。穏を待たせているわけだし」
そういって、『孫子』と書かれた辺りを徘徊する俺。えーと、確か『孫子言説集第一〜五巻』だっけか。
十分ほどたち、ようやく全てを見つけた。孫子、多すぎんだろ……。
割と分厚いそれを抱えて入口の方へと戻ると、待ちくたびれたのか穏が床に座り込み、壁に背を預けてすやすやと寝ていた。あちゃー……そんなに待たせちまったか?
いつものゆったりとした雰囲気を更に強くして、気持ちよさそうに涎を垂らしながら寝ている穏。うーん、このまま寝かせておくのもな……かといって、起こすのも忍びないし……あ、そうだ。
ゴソゴソとブレザーから何本かの紐を取り出し、孫子を一つにまとめ上げる。そして、起こさないように気を付けながら穏をゆっくりと背負った。……背中に当たる感触はこの際無視しておく。
「うーん……むにゃむにゃ……もぅ食べられませんよぉ……」
驚いた。本当にこんなベタな寝言言う奴がいたとは。
右手に孫子を吊るして冥琳の待つ書斎へと足を進める。やはりというべきかなんというべきか、穏も女の子らしく体重が軽いためあまり苦にならない。なんでこんな軽いのかねぇ……。
「ぅ……うーん……はれぇ? ひょーかさん?」
「お? 起きたみたいだな」
階段に差し掛かったところで爆睡していた穏が目を覚ました。階段を昇る際の振動が原因だろう。まだ寝惚けているのか、呂律があまり回っていない。
「なんでわたひ……ひょーかさんにおぶられているんですかぁ?」
「一応本も取ってきて、後は冥琳のところに行くだけなんだけどな。起こそうとも思ったが、あまりに気持ちよさそうに寝てたもんだから起こすのも可哀想だろう、と思って。迷惑だったか?」
「いえいえ……こころづかいありがとうございまふ……それじゃあ、悪いですがこのまま背中で眠っていても良いですか〜?」
「あぁ、眠いんだろ? 無理に起きておく必要もないし、こんな背中でよければ存分に眠っていいぞ」
「それでは、お言葉に甘えて……すぴー」
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