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くらいくらい電子の森に・・・
第八章
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な病院。
「…ここは、ホスピスとよばれる施設だ。分かるか」
「もう治る見込みがない人たちが、安らかに最期を迎える施設って聞いた」
「大体合ってる。ただ、ここは少し特殊でな。半分はその、お前が言ったホスピス。で、もう半分は、精神病棟だ」

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――精神病棟。


塀の内側から、誰かが霜柱を踏みしめる、しゃくり、しゃくりという音が聞こえた気がする…急に不安が増してきて、身が竦んだ。
「ご主人さま、せいしんびょうとうって、なんですか?」
ビアンキも不安を湛えた目で僕を見上げる。改めて聞かれると、どう説明していいものか分からないものだ。仕方ないので、昔テレビで観た光景を参考にする。
「…ガラスの花を咲かせるためにビー玉を土に埋める女とか、世界滅亡スイッチを停止させるために砂粒を数える使命を負った男とか、自分が日露戦争を勝ち抜いた将軍だと思っている怪老人とかが彷徨ったりしていたような」
「こ、こわいですご主人さま!」
「こら。テキトーなこと言うな」
トランクの角で頭を小突かれ、ビアンキごとよろめいてたたらを踏む。
「いつの時代の癲狂院の話だ。建物はちょっと古いが、昨年大規模な改修と設備の入れ替えを終えたばかりだ。中身は都内の大病院と変わらないレベルだぞ」
紺野さんは、慣れた足取りで緩い斜面を登っていった。柚木も、そそくさと後に続く。僕らよりも少し遅れて駐車場に車を停めた老夫婦が、紺野さんに微笑んで会釈していく。顔見知りなんだろう。
「どのくらい、ここに通ってるの」
「……さーな」
紺野さんは、少し足を速めて受付の暗がりへ入っていった。



「最近、少しご機嫌がいいんですよ、彼女」
長い渡り廊下を、先導して歩く看護士さんが笑顔を浮かべた。…彼女ってことは、女か。少しだけ、ほっとする。
「そうか…この前の土産、気に入ってくれたんだな」
そう言って紺野さんは、薄く微笑を浮かべた。
「ええ、片時も手放さないんですよ」
「…ありゃ、そりゃやばいな。もう全部壊れるかも」
「あら、てっきり次のを持ってきたのかと思ったのに。もう13個、壊れましたよ」
「あぁ…急なことでして」
語尾を濁して、苦笑いを浮かべる。今朝ちょっと流れていたニュースの重要参考人がここにいるなんて、看護士さんも気付くまい。

やがて、淡いクリーム色をした引き戸が見えた。赤いランプが点灯する電気錠に看護士さんがカードキーをかざすと、ランプが緑色に変わり、引き戸がスライドした。引き戸の向こうには、ガラス張りのナースステーション…みたいなものが見える。看護士さんが手を振ると、男の看護士(?)が、のっそりと腰を上げた。
「ご苦労様です」
「ご苦労様です。…お見舞いの方ですか。ご面倒ですが、荷物をこちらに預けてゲートをく
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