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くらいくらい電子の森に・・・
第八章
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疑心暗鬼に囚われたら、どちらかの足手まといになる。…分かった。俺も、お前らが裏切らない前提で動く。一刻も早く助かるために、俺を警察に売り渡したりしないと信じる。それで充分だ」
「そういうこと」
「お互い、うまくやろうな。俺はMOGMOGを守る。お前は柚木ちゃんを守る」
「ばっ、お、起き、起きたらどうする…!」
「ははは…そういうとこ、学生だな」
こ、このデリカシーのない中年(?)が!そわそわしながら柚木を伺うが、ちょっと凹むほど安らかに寝ていた。ひとまず胸をなでおろし、手元のノーパソに目を落とす。柚木が寝たのとほぼ同じくらいのタイミングで、ビアンキもスリープモードに入っていた。金色の髪がひと房、ビアンキの頬を滑り落ちた。
「ビアンキも、夢とか見るのかな」
思わず呟いて後悔した。絶対、柚木が目を覚ますほど大爆笑された上に、僕の中二病っぷりを柚木にもバラされるにちがいないと思った。でも紺野さんは、バックミラー越しに僕を一瞥して、何でもないことのように、こう言った。
「おぉ、見るかもしれん」
「…いいよ、そういうフォローは。つい言っちゃっただけだから」
「いや、本当に見るかも知れないんだよ。…ビアンキは特にな」
「どういう意味…?」
「向こうについたら、説明する」
「さっきから言ってるけど、『向こう』ってどこ」
「山梨の、済生会病院だ。…隔離病棟に『奴』はいる」
「隔離病棟……!?」
「俺達が育ての親なら、あいつは『産みの親』ってとこだ」
……『向こう』に着いたら、とてつもなくややこしい話を聞かされそうだ。



起きてるような、寝てるようなまどろみが来た。スリープモードに入ったんだ。ご主人さまが何か話してるけど、難しくてよく分からない。柚木が歌う声が楽しかったけど、もう終わっちゃった。柚木も、スリープモードに入ったのかな。

さっきのリンゴが、すこし胸にもたれてる。すごく重い。消化するまでに、すごく時間がかかるかも…もしかしたら、消化しきれないかも。胸の中に消え残ってる、重たいリンゴがスウッと透明になって、その奥にいくつか扉が見えた。そのなかの一つを開いてみる。少し黄色っぽいディスプレイが、扉の向こうに広がった。そして愛おしげに私を覗き込む、ご主人さまじゃない『だれか』。
《本当に、大好きなんだね》
微笑む『だれか』。抜けるように白い肌と、細い腕は女の人かな。でも、男の人みたいな気もする。私の体に、もう1人の『だれか』がそっと重なる。
「あのね、新しい音楽をみつけたんですの!いっぱい、聞かせてあげますからね!」
沢山コピーしたアドレスを広げて、特にお気に入りのアドレスを入力する。『ご主人さま』が登録しているニコニコ動画にアクセスして、動画を再生すると、音楽が流れた。私にはよく分からないけど、私に重なっている『
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