第八章
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らマンションの防犯カメラに映ってるはずだろ!?」
次のカーブで、車体が大きく揺れて二人ともトランクに押しつぶされる。そのあとのカーブも散々だった。…無理もない。『重要参考人』なんて『犯人』の代名詞だ。
「…いてて…冗談、冗談だよ」
「遺留品て何だ遺留品て…」
そういったきり、紺野さんは口を閉ざしてしまった。相変わらず珈琲豆を抱え込む柚木を見る。柚木もこっちを見た。柚木は一回、小さく頷いたきり、目を閉じてしまった。
――この子は、すごい。皮肉でもなんでもなく、本気でそう思った。
やがて眠りに落ちて、小さな寝息を立て始めたころ、紺野さんの顔が少し綻んだ。
「…この子、大丈夫か。こんな無防備で。殺人者のマイカーに乗ってるかもしれないというのに」
「直感とか、本能とか、そんなのだけで生きてるからね…」
そして彼女は直感的にというか本能で判断しているんだ。――紺野さんは、犯人じゃないと。
紺野さんが黙ってる間、僕は紺野さんを信じるかどうか、ずっと考えていた。状況証拠はグレー。決して白じゃない。動機は、紺野さんの話を聞いただけでは白。でも、これもグレーだ。僕は彼の話しか聞いていない。僕に話していない、武内殺害の動機があったかもしれない。考えすぎて、車酔いも重なって気持ち悪くなってきた頃、僕は一つの結論に達した。
紺野さんが、白という前提で動くことにする。
信じたわけじゃない。だけど武内とその一派は、僕と柚木を襲ったという事実がある。このニュースのことがなくても、僕たちが今危うい立場にいることには変わりない。ここで僕1人が疑心暗鬼で動いたら、足元を掬われるだろう。
「…僕は、紺野さんが白っていう前提で動くよ」
「なんだよ、急に」
「今後、どんな続報が出てきてもね。真相なんて関係ないんだ。ただ」
柚木の寝顔に視線を落とした。腕からこぼれかけた珈琲豆の袋を受け止めて、トランクの脇に置く。
「僕と柚木が、この異常な状況から解放されればそれでいいよ。そのために、紺野さんに協力する。命に関わらないかぎりね」
「――お前らしいな」
バックミラー越しに紺野さんの苦笑いが見えた。
「柚木ちゃんだったら『紺野さんはそんな人じゃない!誰がなんて言おうが関係ないよ!』くらいは言ってくれるぜ。お前にもそれくらいのことを言う可愛げはないのか」
「僕は柚木にはなれない」
柚木は僕の隣で、安心し切って眠りについている。僕も、抱えた珈琲豆を受け止めてくれる人として、くらいは信用されているのだろう。
「――だが、いい判断だな」
紺野さんの視線が、バックミラー越しに柚木の寝顔に執拗に絡みつく。なんかイヤなので、柚木のマフラーをずらして顔を隠す。一瞬寝息が途切れたが、また規則的な寝息が聞こえ始めた。運転席から、これ見よがしの舌打ちが聞こえた。
「どちらかが
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