第一部第五章 電撃作戦その三
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「革新派を絶対の正義としよう。ならば保守派は絶対の悪となる。そして保守派は一人残らず抹殺され革新派の悪行は正義の名の下に覆い隠されてしまう」
「ぞっとする話ですね」
「今でも市民団体はそうした傾向があるな。エウロパはまだいいが連合の市民団体の中には海賊や犯罪組織と結託している連中もまだいるそうだな」
「それは聞いております」
連合の社会問題の一つである。
「我々のところにも多少はいるがな。だが連合程多くはない」
「連中のところには海賊等が多いですからな」
「その海賊だが連合内ではかなり減ったようだな」
ラフネールは海賊に話を移した。
「はい。特に近頃は連合軍に投降する者が相次いでいるようです」
「そして投降した彼等を軍に組み入れているらしいな。おかげでその数はかなりのものになったというが」
「そうですね。彼等には軍律から教えているそうですが」
新しく出来た連合軍の風紀は厳しい。特に一般市民への行動に関しては厳罰を以って処される。
「またそれは気の長い話だな。我々ならば問答無用で最前線に送り込むがな」
実際にサハラの国ではそうしている国もある。
「そうもいかないのでしょう。連合はこと人権に関しては我々より五月蝿いですから」
それが海賊と結託する市民団体の存在を許してきた。
「そうだな。つくづくエウロパに生まれてよかった」
ラフネールは祖国への愛と連合への侮蔑を交えた笑みを浮かべた。
「エウロパ程の規模の国が一番ことをやり易い。連合程大きくては小回りが利かない」
「連合の連中は我々を一飲みに出来ると言っておるようですが」
「そう言って千年以上経っている。そうこうしている間に我々はサハラを完全に我がものにし奴等に正面から対抗する力を手に入れてやる」
「その時こそ我等がもう一度人類の頂点に立つ時」
「そうだ、欧州の黄金時代の再現だ」
彼等は強い口調で言った。そして話を続けた。
サハラ西方でオムダーマンがミドハドに対して大規模な攻勢に出たという情報はサハラ北方のエウロパ総督府にも伝わっていた。
「最近オムダーマンは何かと忙しいな」
艦隊司令の一人ヴォルフガング=クライストが隣にいる男に対して言った。
長身である。全体的に筋肉質であり陸上競技の選手を思わせる身体つきである。蜂蜜色の髪に青灰色の瞳を持っている。顔はやや童顔で年齢より若く見える。二十代に見えるが実は三十代で妻も子供もいる。用兵の迅速さには定評のある人物である。
「ああ。何でも一人凄い奴が出てきたそうだぞ」
クライストに声をかけられた黒い髪に瞳の男が答えた。
豊かな髪である。そしてその瞳は琥珀の様に輝いている。クライストに比べてやや小柄ながら均整のとれた身体をしている。その顔立ちは彫りが深く美男子と言ってよいものであ
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