第3次ティアマト会戦(6)
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な部下を持ったことなど数えられないほどにある。だが、軍人貴族としての矜持と名誉を胸に戴くグレゴール・フォン・ミュッケンベルガーにとっては、誠に力を持つ軍人こそ信頼に値するのであって、口先ばかりの男ほど迷惑なものはないのである。
その点、皇帝の寵姫の弟で出世したラインハルトも、本来は嫌って当然の人材なのだが、今回の働きを含め、その評価を改めつつあった。ラインハルトは、有能である、と考え始めていたのだ。
少なくとも、シュターデンよりは。
シュターデンが壊滅されれば、当然ながら帝国の右翼ががら空きになる。それどころではなく、せっかく撃ち減らし優勢となった艦数においても、それをひっくり返される可能性すらあるのだ。
しかも、帝国軍に余剰兵力は存在しない。3個艦隊で出征し、それぞれをフルに活用して各個撃破を図ったものの、一度は成功した各個撃破すらも尋常ならざる艦隊再編成によって出現した残存部隊のせいで、目論見を崩された。
局所的には、勝った。
敵の一個艦隊を華麗に突破し、更に本隊を蹂躙、ミュッケンベルガーも一撃を加えたばかりなのである。このまま継続すれば、敵本隊は全滅することができるだろう。そうすれば、第3次ティアマト会戦は帝国軍の一方的な勝利として歴史に刻まれるはずだったのだ。
だが、今、それに傷がつきつつある。
シュターデンが負ければ、この戦いの趨勢は振り出しの互角に戻されるのだ。
「……全軍、撤退せよ」
ミュッケンベルガーは静かに席に座った。
これ以上、戦闘を継続しても、勝利を得ることは難しいだろう。
そうなれば、徒らに戦力を消耗するのも戦略的に意味がない。
戦術的には、帝国軍の勝利だろう。
だが、戦略的な勝利者は、存在しなかった。
***
撤退しようとした敵シュターデン艦隊を徹底的に叩き、被害を更に与えたことに満足した第10艦隊が、第5艦隊と合流したのは、翌日0035時のことである。
各艦隊が生存者の救出や撤退を始める中、ウランフ中将の旗艦、盤古が第5艦隊旗艦、リオ・グランデに接舷した。
リオ・グランデの艦橋に姿を現したウランフ中将は、顔にこそ疲労の色を滲ませていたが、足取りもしっかりとした様子であった。対するビュコックは、指揮官席に座り、腕を組んだまま黙している。
「ビュコック中将」
ウランフの声によって、ビュコックは顔を上げた。
「ウランフ中将か」
「お休みになったらどうですか、お疲れの様子ですよ」
ウランフはビュコックが眠りかけていたことに気づいていた。
「そうもいかんじゃろう。よくとって辛勝、実際には負けという戦いじゃったのだから、総司令官がどっしり健在をアピールせねばの」
「ご苦労をおかけした。半包囲に持って行く
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