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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
第3次ティアマト会戦(5)
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ていることだった。言われるまでもないことである。何しろ、彼らがこの敵艦隊の存在に気づいてから、ずっと恐れていた事態なのである。

 アレクサンドル・ビュコック提督はこの知らせに重々しく頷いただけであった。そして一向に接近しようとはしないミュッケンベルガー艦隊・シュターデン艦隊の2個艦隊に対して、今や取り得る方法は二つだけであった。
 一つ、もはや第4艦隊を諦め、今現在向き合っている敵2個艦隊に対して更なる攻勢を強めるか。だが、この2個艦隊が迂回艦隊と呼応して突撃するのは時間の問題だと思われた。
 もう一つ、撃破されたとしても多く残っているであろう残存兵力を救い出すために転進して敵迂回艦隊と正面決戦をするか。
 だがどちらも前後面に位置するもう一方の艦隊が背面を突くことは明確であった。
 そこで残された道は前後面に配する敵を同時に処理しつつ、撤退するというものである。この場合、同盟2個艦隊が逃げ切れたとしても、それは第4艦隊を本当に見捨てることと同義となる。帝国軍が残存第4艦隊を殲滅することは明白なのだ。

「第4艦隊の損害報告は届いたか」
『…ザッザ……旗艦中破、パストーレは重傷で、フィッシャー…ザ……傷を負った。第4艦隊の中級指揮艦も半数が破壊……』
 ビュコック提督は画面の向こうにいるであろうウランフ提督に話しかけた。別々の艦隊運動を行っていたため、つい先刻まで可能であったビデオ会議は既に不可能になっていた。帝国軍によると思われる電子妨害によって、音声通信にノイズが入り込んでいた。
「旗艦レオニダスは自沈処理、艦隊で動けるのは6割。ひどい被害じゃ」
 ビュコックは隠しきれない溜め息を小さく漏らした。詳細な報告は未だ届いていなかったが、ここまで簡単に抜かれるということは敵迂回艦隊は凡庸という言葉とはかけ離れた実力を有していた、ということらしい。
「どうすればよいかの?」
『……ザザ……見捨てるのは私の本意ではありませんな』
「うむ、儂も同感じゃ。だがここから立て直して撤退する、それも第4艦隊を見捨てずに、というのがどれだけ大変なことか」
『……ザザ…ザ…これというのもパストーレの無能者が??』
「今はそれを言っても始まらんじゃろう。もうすぐ敵の奇襲艦隊が儂の艦隊に突撃をするじゃろう。そこで、ウランフ提督には??」
『ザッ!??』
「音声途絶しました! 我が軍の間隙に敵ミュッケンベルガー艦隊が突入してきたことが原因かと思われます」

??来たか。
 という言葉は出さなかった。ビュコックには来るとわかっていたことなのだ。
「続いて、敵奇襲部隊がこちらに突入してきます!」
 ビュコックは艦隊放送のスイッチを入れた。
「我が艦隊に伝達する。敵奇襲部隊は我が軍の後方から突入を開始する。左前方の敵1個艦隊がこちらに向
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