第3次ティアマト会戦(5)
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のまっただ中に跳躍《ワープ》したのだ。出現によって生じた二度目の時空震が、第4艦隊に襲いかかった。更に、跳躍《ワープ》後に自爆するように設定されていた19隻が爆発するに当たって、第4艦隊の混乱は極致を達したのだった。
フィッシャーはようやく収まった震動から立ち上がった。ディスプレイは再起動がかかったセンサー類から徐々に回復し、そのデータを映し出し始めている。オペレーターが普段は使うこともない手動の舵に取り付き、肉視窓にかけよったオペレーターが必死に回避を叫んでいる。通信士官が叫んだ。
「て、敵艦隊本隊が突入してきます!」
フィッシャーは言葉もなかった。まさか、無人艦隊をこんなことに利用するなど。時空震さえも、武器として利用し、敵を殺そうとする執念。
そしてこのアイディアを思いつき、まんまと同盟軍の指揮系統を瞬殺した鬼謀詭計。
「指揮系統の、回復だ……。敵が突入してくるぞ! 急いで艦列を組み直せ!」
それは誰もが無理だとわかる命令だった。だが、これしかやるべきことがない、という命令でもあった。。第4艦隊に、撤退は許されない。第4艦隊の撤退は、味方の2個艦隊を見殺しにするのと同義であったからだ。だが、もはや時間も余裕も消し飛んでいた。
??抜かれるかもしれんな。
フィッシャーは、横で腰を抜かしたまま立ち上がれないでいるパストーレを見ながら、そんな考えが頭に浮かぶのを抑えられなかった。
***
ラインハルトの命令は単純であった。
「混乱に陥った敵艦隊に、我が艦隊はこれより突入を開始する! だが、我々が攻撃すべき敵は、敵艦隊すべての艦艇ではない! 我々の攻撃目標は二つ! 我々の前方にいる敵艦と、敵の指揮艦である! これ以外には一発の弾も不要だ! 我々は敵を突破することを目的としている! 繰り返す、火力は全力で、だが集中して使え!」
ラインハルト艦隊の動きを、遠巻きに見ることが叶ったならば、それは脆弱な堤防を突き崩す光の濁流のように、見えたかもしれなかった。
ラインハルト艦隊は徹底的に、同盟軍がこの会戦初期で帝国2個艦隊に対してやってのけたことと同じことを繰り返したのである。敵の旗艦を見つけ、それを集中的に叩き、指揮系統をずたずたにして、勢いのまま突き進む。
詭計によって混乱に陥っていた第4艦隊には、既にそれに抗う力は残されていなかった。一艦一艦に至るまで統制の行き渡ったラインハルト艦隊は、一つの巨大な有機生命体のような柔軟性と力強い勢いで第4艦隊を突破した。
それが1915時のことである。
***
帝国の迂回艦隊が同盟軍第4艦隊を突破したことは、同盟軍が決定的な窮地に陥ったことを意味していた。それは残された第5艦隊、第10艦隊の両司令官が一番よく知っ
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