第3次ティアマト会戦(3)
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と帝国軍が温存しようとしているその艦隊は、敵の精鋭部隊ということでよいのかな?』
続いて発言したのはパストーレ中将だった。
「精鋭には間違いないでしょう。かの分艦隊司令の指揮は非常に高度であり、またその練度も帝国の標準的なそれとは一線を画すものでした。パストーレ中将も、第5次イゼルローン攻略戦の戦闘詳報はお読みになられたと思いますが?」
フロルは慇懃に聞き返したが、パストーレはカメラから視線を逸らした。フロルは小さく溜め息をつく。
「するとミュッケンベルガー元帥はこの艦隊を切り札として使おうとしていると考えられるな。問題は、切り札を出すタイミングと、使い方が皆目わからんということだ」
ビュコックはフロルの淹れた紅茶に口を付けた。さすがにフロルは忙しくなって、以前のように毎度毎度紅茶を淹れることはできなくなっていた。だが、作戦会議の前には景気付けの意味も込めて淹れることが通例になっていた。
『2個艦隊が我が軍を引きつけ、機を見てその精鋭部隊を叩きつけるのでは?』
パストーレの発言一つで、会議室の張り詰めた空気が弛緩した。もっとも、それは空気が和んだとか、そういった善良な類のものではなかった。明らかに、拍子抜けの類のものである。
『……パストーレ中将、我が軍は3個艦隊、敵2個艦隊で、正面からぶつかれば、数の上で我が軍が圧倒的に優勢だ。どう間違っても敵に勝機はない。我が軍は兵力を集中し、指揮権の統一にも問題もなく、武器弾薬の補給も、兵の休息も万全で、士気も高い。その上で、正面衝突して勝つというのはそれこそ帝国が新兵器でも持ち出してこなければ、話にならんよ』
ウランフは口に笑みすら浮かべながらそう言ったが、フロルはウランフの顳かみの血管が浮き出ていることに気が付いていた。
『では、帝国が新兵器を開発としたという可能性が??』
「兵力の分散を避けるという観点からしても、本来ならばこの艦隊運用は帝国が取るはずもありません」
フロルは口早にパストーレの発言を遮った。本来なら、上官の言葉を遮るのは叱責を受けても不思議ではなかったが、たった一名を除き不思議には思わなかったのだ。画面の端でフィッシャー准将が何かを諦めたように首を振ったのが見えた。
「ならばあの艦隊はただの囮なのではないか?」
ビュコックはホログラムに浮かぶラインハルト艦隊を睨みながら言った。
『ただの張りぼてだと?』
「兵力が少ないのをデコイでごまかしている……」
ありうるだろうか。
『かの艦隊が今回の遠征を離れたということは聞かない。戦力は互角だと考えるべきだろう』
ウランフが眉をひそめながら言った。
「問題は、これ以上策を練るほどの時間が、我々に残されていないということじゃろうな」
ビュコックが腕時計に目をやった。フロルの端末で表示された両軍の有
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