帰郷
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その顔から生気は失われていなかった。そして口にした、名前。フロル・リシャール。オーベルシュタインはその名を記憶した。要注意人物から告げられた要注意の名前として。
***
フロルがティアマトにて、攻めて来る帝国遠征軍を討つ、と聞いたのは宇宙暦795年1月28日のことであった。そして彼をして意外と思わせることが知らされる。
動員される先行艦隊の陣容である。ビュコック提督率いる第5艦隊、ウランフ提督率いる第10艦隊がその中にあったのは彼の記憶と変わらなかったが、そこにパストーレ中将の第4艦隊が加わったのだ。
これはフロルの頭を悩ませた。史実では、ホーランド中将率いる第11艦隊がその席を埋めたはずである。だが、どうやらフロルの進言がトリューニヒト経由で軍に認められたらしく、第11艦隊は同盟守備隊に編入されていた。そのこと自体は彼を喜ばせたが、それによって歪められた歴史の結果は彼を悩ませる。
ホーランドのやったような独断の孤軍突出は起こらないだろうが、さりとてそれが戦勝に繋がる要素とも思えなかったのだ。恐らく、国防委員会はトリューニヒトの意思は別にして、この3艦隊以上の戦力を出し惜しみするであろう。差し当たっては、この3艦隊で帝国軍35400隻を迎え撃たねばならなかった。
そこでフロルはまたもや策動を開始する。彼はまず、パストーレの元を訪れ、先行艦隊の総指揮は、フロルも幕僚を務める第5艦隊司令官アレクサンドル・ビュコック提督であることを認めさせた。そのことに関しては、パストーレも反論をしない。彼は自分よりもビュコックが有能の人であることを理解していたからだったが、
「この戦いが終わったら、私の元に戻って来れるだろう。楽しみにしていてくれ」
という言葉はフロルを不愉快にさせた。
続いて、フロルはウランフの元を訪れ、同様のことをお願いした。
「貴官の言うことに異議はないが、どうしてこんなことを君がしているのかね?」
ウランフはそのこと自体はすんなりと快諾したが、許可を取りに来たフロルに対してはこのような言葉をかけた。
「私はビュコック提督の部下です。提督のためになることなら、苦労を惜しみません」
ウランフはパストーレやトリューニヒトとも親しいと聞くフロルの言葉に、驚きの感情を抱いたが、それを素直に認め、フロルを返した。少なくともウランフの目には、その言葉と態度が嘘であるようには見えなかったのだ。更には、誰よりもビュコック提督自身が、フロル・リシャール准将という男を信頼していることを知っていたということもあるだろう。フロルを疑うのは、自分の直感を疑うことになるだけではなく、ビュコックをも疑うことになるのである。ここは、信用しておくのが得策だった。
??それに、クソ
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