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星河の覇皇
第一部第五章 電撃作戦その一
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「これで遂に正式な艦隊の司令官になったな」
 アジュラーンはモニター電話でアッディーンに対して祝辞を送った。
「はい。ですがミドハドとの戦いがまだ控えていますからね。喜んでいる暇はありません」
 ミドハド政府はこの度の侵攻に対し激しい怒りを露わにしていた。そして再び軍を動員しようとしていたのである。
「その件だがまた君に働いてもらうことになりそうだ」
「こちらに攻めて来るのですか?」
「すこし違うな。今度は我が軍が攻めるのだ。悠長なことを言っていられる状況ではなくなってきたようなのだ」
「といいますと?」
 アッディーンは問うた。
「うむ。今回の勝利で危惧を覚えたミドハドは水面下でサラーフと接触しているようなのだ」
「ほう、犬猿の仲の二国が」
 両国の対立関係は昔からでありそれはオムダーマンとサラーフの関係よりも根が深かった。
「そうなのだ。我等の勢力伸張と敗戦の恨みを晴らす為にお互い手を組もうとしているらしい。そして我々を叩くつもりのようだ」
「よくある話であすね」
「そう言ってしまえばそれまでだがな。だが我が軍もそれに対して手をこまねいているわけにはいかない」
「そこでミドハドを徹底的に叩くと」
「そういうことだ。先んずれば人を制す、というしな」
 これは古代中国の覇王項羽が言った言葉である。
「今回の作戦においてミドハドを完全に潰す。そして後顧の憂いを完全に絶つということで決まった」
「その為の兵は既に決まっているのですか?」
「まずは君の艦隊だ。そしてカッサラ方面から六個艦隊を向ける」
「といいますと閣下も?」
「私は今回の作戦には直接参加はしない。カッサラ星系の防衛が任務だ。サラーフの動きが気になるしな」
「成程」
 当然といえば当然であった。
「今回君はカジュール方面からの侵攻を担当する。言わばカッサラからの主力とは別の陽動部隊だ」
「ですがかといって油断は出来ませんね。おそらく連中も必死ですから」
「そうだ、我が軍は今九個艦隊を持っている。そのうちの大部分を使う。それでも苦戦は必至かもな」
 対するミドハドは十個艦隊である。先日アジュラーンとアッディーンに敗北した二個艦隊はようやく再建されたばかりである。
「閣下の艦隊をカッサラ防衛に置き一個は予備ですか」
「そうだ。この戦いは戦力の劣勢を承知で行なうものだ。そして作戦成功は君の手にかかっている」
「私にですか?」 
 アッディーンは思わず問うた。
「そうだ。まず君はカジュール方面から進出し迎撃してくる敵軍を撃破した後敵主力の後方に回ってくれ。そしてカッサラから侵攻する我が軍の主力の援護を頼む」
「こちらに向けられる敵の戦力はどれだけですか?」
「一個艦隊程だと思われる。今カジュール方面に向かっている敵艦隊があるらしい」

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