第七十話 未来への飛翔
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が同じなら争っていますね」
ナラージはミズホの説を捕捉してきた。
「互いに。そうなる筈です」
「けれど今のところ二つの勢力は協力関係にある」
「そうです」
ナラージは今度はフィオナの言葉に対して頷いてみせた。
「それなりに親密に。おそらく互いに利用し合っているでしょうが」
「ってことはやっぱりあの連中は目的は違うのかね」
「そうじゃないでしょうか。だから同盟を組めて」
「目的ねえ。何かあいつ等の情報収集も必要になってきたな」
「修羅かデュミナスから投降する人が出て来ればいいんだけれどね」
「おいおい、そりゃ幾ら何でもないだろ」
ラウルはすぐに妹の願望を否定した。
「絶対にねえな」
「やっぱりそうかしら」
「御前もわかってるじゃねえか」
今のフィオナの言葉に突っ込みを入れる。
「あの連中はそんなタマじゃなさそうだぜ」
「ではやはりここは」
ナラージの言葉に慎重なものが宿る。
「これまで以上に慎重に調べていきますか」
「そうですね。手懸かりは今のところなしですが」
「そうだよな。じゃあとりあえずは」
「はい?」
「何ですか?」
ナラージとミズホはラウルの言葉に顔をあげた。
「休もうぜ。これ以上考えてもいい答えは出ねえよ」
「そうね、ラウルの言う通りね」
フィオナもそれに賛成して頷いたのだった。
「考えが煮詰まってきたし。それよりも」
「それよりも」
「骨休めにしましょう」
彼女もまた兄と同じことを言うのだった。
「お茶でも飲んでね」
「お茶ですか」
「あっ、それでしたら」
ここでミズホが笑顔になって二人に言ってきた。
「お茶菓子で美味しいのがあるんですけれど」
「お茶菓子?何だ?」
「クッキーです
話す側から笑顔が零れる。
「今の時間だとそろそろユウキさんがお茶の時間に入りますし」
「じゃあユウキのところに行って皆でかよ」
「それでどうでしょうか」
「いいわね、それ」
フィオナがにこりと笑ってミズホに答えた。
「紅茶とくればクッキーよね、やっぱり」
「はい」
「そうですね。それでは皆で」
「ああ」
ナラージとラウルも続く。
「ユウキさんのところへ」
「賑やかにやろうぜ」
笑顔で言い合いながら今はユウキのところに向かう。クッキーを手に。バグダットでの戦いはその一幕を終えた。しかしすぐにまた。もう一幕が開けるのだった。
第七十話完
2008・6・30
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