戦の始末
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で、地上戦はいくらか早く終ったであろうことだけが、彼の心を慰めた。だがだらだらと散発的に続く艦隊戦は、まだ続きそうである。今月中にこの宙域から全軍撤退できるかどうか、と言ったところだった。
恐らくヴァンフリート4=2の基地は破棄することになるだろう。既にこの宙域は戦略的な意味を失った。無用の長物になるだけであり、また敵の攻撃によってかなり破壊されたと聞く。問題はあの後方基地にいた人的被害の方であった。あそこには後方任務の統括者、シンクレア・セレブレッゼ中将や、同盟最強の白兵戦部隊薔薇の騎士連隊、そして何よりかつてのビュコック提督の作戦参謀、フロル・リシャール中佐がいたのである。むしろその人的被害の方が、ビュコックにはよほど気がかりであった。
「閣下、ヴァンフリート4=2の同盟基地から通信が入っています」
ファイフェル大尉がビュコックに告げた。
「来たか、では繋いでくれ」
ビュコックは通信兵に指示を飛ばした。
スクリーンに映ったのは、セレブレッゼ中将であった。
「おお、セレブレッゼ中将、健在か」
ビュコックは同じ階級であるこのセレブレッゼ中将を、後方任務のプロとして高く評価していた。彼もまた、軍隊における後方任務の重要性を深く理解していたのである。前線で兵士が意気揚々と戦っていられるのは、後方で働く者たちがいるからこそ、であることを知っていたのである。
「は、ビュコック提督もお元気そうで」
「元気なものか。こんな無為で徒労感だけが残る戦いなど、疲れるだけじゃよ」
ビュコックは肩を竦めてみせた。
「それで、ヴァンフリート4=2同盟基地の被害は?」
「ほぼ半壊というところです。恐らく補修にかなりの費用と期間を要します。人的被害は70万に達するかと」
「はぁ」
ビュコックは小さく溜め息をついた。戦闘には被害がつきものである。だが半世紀戦場を駆け巡ってきたこの老提督をしても、その無情さは慣れることがないのであった。
「セレブレッゼ中将、これはまだ決定事項ではないが、恐らくその基地は廃棄されることになるじゃろう。遅くても今月中に全軍がこの星域から引き上げる。その基地の戦略的な価値は失われるのじゃ」
「は、私もそう考えていたところです」
セレブレッゼは固い表情のまま、頷いた。
「では撤退の準備をしてくれ。人員や物資の撤退の計画を立ててくれ」
「は、小官の専門ですな」
ビュコックは、そこで笑みを浮かべようとして失敗したセレブレッゼの顔に、何か大きな衝撃的な出来事があったことを悟った。あるいは今までずっと後方勤務だったため、万単位の人の死というのを見慣れてないのかもしれぬ。だが、そこに幾分かの後悔の色を、ビュコックは敏感にも見て取ったのである。
「セレブレッゼ中将、確か基地防衛のために、儂
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