薔薇の騎士連隊
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うことを忘れていたようだ。俺ともあろうものが」
フロルの情けない様子を見ながら、シェーンコップは自嘲の言葉を吐いた。だが頬には笑みが浮かべられ、フロルを見つめている。
「フロル中佐、あんたのローゼンリッターへの仮入隊を認める。……聞いたか、連隊の諸君。これからこのフロル・リシャール中佐は我が連隊の見習いだ。みんなで可愛がってやれ!」
おう、という図太い声が訓練場を見たした。こうして、フロルはローゼンリッターに仮入隊が決定したのである。
その日一日、ローゼンリッターに付き合ったフロルは、文字通り徹底的に痛めつけられた。それは愛情という名の暴力というよりは、暴力というな名の歓迎であったろう。彼は改めて、なぜ薔薇の騎士連隊が同盟最強と呼ばれるかを身に染みて理解した。その訓練は同盟の標準的なそれとは桁違いの苛烈さであり、そしてその勇敢さや気力の面においても段違いだったのだ。これでは最強になるのも当然だろう。フロルですら、何度か早まったか、と後悔したのである。それもたった一日の間に。だが、それでも彼はとりあえず、仮入隊一日目を乗り切った。それはもはや、彼の意地、というものだった。
そして彼が自室に戻ったのは19時だった。彼がベットに倒れ込んだ時、彼はすっかりとある女性との約束を忘れていたのである。彼が再び意識を回復したとき、時刻は23時を回った頃だった。彼は慌てて部屋にあったパンを口に詰め込み、悲鳴を上げる体を動かして、イヴリン・ドールトン大尉の部屋の前に来たのである。
彼は恐る恐る彼女の部屋のドアを叩いた。
ドアはすぐに開いた。だが、部屋の中は真っ暗だった。訝しみながら、フロルはその中に入った。後ろでドアが閉まる。と同時にキーロックの音がした。
驚いたフロルはドアに触ったが、扉は開かぬままであった。
その時、闇の中で動く気配があった。
フロルはその影に押しつけられて、ドアに叩き付けられた。元々体力が切れていたフロルである。それに対応することも、それを避けることも、できなかった。
まして、唇に押し付けられた唇を、離すことすらも。
数秒だったろうか、数分だったろうか。闇の中で、フロルとイヴリンの息づかいだけが聞こえていた。
「……あんた……遅すぎんのよ」
「悪い」
フロルは小さく呟いた。抱きついた彼女の体を、優しく抱きながら。
「何してたの?」
「ローゼンリッターで訓練」
「あの薔薇の騎士連隊と?」
闇の中でイヴリンは身じろぎしたようだった。
「そう」
「あいつらの副隊長、私を口説きに来たことがあるわ」
フロルは何も見えない闇の中で、小さく笑った。いかにもシェーンコップのやりそうなことだ。
「それで?」
「尻蹴っ飛ばしてやったわよ。当たらなかったけど」
「へぇ、結構な美
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