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星河の覇皇
第一部第四章 若き獅子その三
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。そして遂に国家主席に選ばれたのだ。浅黒い肌に彫りの深い顔立ち、黒い肌に瞳を持つ痩身の男性である。背はマウリアの男性では普通位である。
「はい。その数九十億、艦艇にして三千万に達するこれまでにない規模の軍です」
 部下である若い男は姿勢を正し報告した。
「ふむ。それはまた凄い数だな」
 クリシュナータはそれを聞いて言った。
 彼は今主席の官邸にいる。見ればこの官邸もインドのものである。彼等は昔ながらの文化を固辞しているところがある。この官邸にも多くのそういった装飾品が置かれている。寺院に行けば多くの神々の色彩豊かな像がある。
「それ程までの規模の軍なぞ今まで見たとこも聞いたこともない」
 彼は他人事のように言った。
「閣下、お言葉ですが」
 部下はそんな彼の様子を見て心配そうな顔になった。
「あまり他人事ではありませんぞ」
 それだけの軍が誕生したとなるとその影響力は連合内にだけ留まるものではない。この人類社会全体に及ぶ問題である。
「今我々は彼等とは長年に渡る友好関係を保っておりますが」
「それでも彼等の存在を忘れてはならない、と言いたいのだな」
「はい、若しも彼等がその関係を放棄し我が国に雪崩れ込んで来たならば・・・・・・」
「その時は瞬く間に蹂躙されるな。数が違い過ぎる」
 クリシュナータは落ち着いた声で言った。その通りであった。
 連合の人口は三兆、それに対するマウリアの人口は二千億と言われる。だが彼等は連合各国やエウロパのように厳密な人口統計をとっているわけではないので実際はそれよりもずっと多いと言われている。だがそれでも大きな隔たりがあるのは事実である。
 それは軍の規模に直結する。マウリアの兵力は四億程度である。彼等は連合と友好関係にあり隣接するサハラは多くの小勢力に分裂しておりさ程軍備を必要としなかったのである。国境警備と治安維持さえ出来ればそれでよかったのである。
「そうです、今のうちに手を打たないと大変なことになります」
 部下は深刻な表情でクリシュナータに対して言った。
「そうだな。では軍の拡張と国境線の防衛の強化をするように」
「ハッ、他には!?」
「とりあえずはそれだけでいい」
 彼は落ち着いた声で言った。
「あの、連合は九十億の軍を持ったのですよ」
 部下は彼のその声に今度は呆然となった。
「だからといってすぐに動けるというものではあるまい」
 彼は部下に対して言った。
「今彼等はその膨大な軍を本当に統一された軍にする為に必死だ。今は積極的な行動に出ることは出来ない」
「そうでしょうか」
「そうだ。制服の生地から艦艇まで何もかもが全く異なるのだぞ。それを一つにするまでには時間がかかる。それまでは気にする必要はない。そして我々はその間に備えをしておけばよい」
「それでよ
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