第一幕その四
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第一幕その四
(私はそれだけでいいのに。私が貴方に心を捧げたあの時のことを)
「怒りの日は近い」
「我々がローマに対して立ち上がる日が」
彼等はそれを信じながらその場を去っていく。続いてドルイド達も尼僧達も。その中に一人の美しい尼僧がいた。黒い髪に丸みを帯びた鼻をしている。黒い髪と目だがそれはノルマはよりは幾分穏やかだ。どちらかというと中性的なものもある顔であった。
白いガリアの尼僧の服を着ている。その彼女が言うのであった。
「何もかも終わった。けれど」
彼女は言う。
「私は罪を犯しているのだわ。あの方を愛するという罪を」
罪の前に俯いてさえいた。
「この罪から逃れたい。けれどどうすればいいの?」
神に対しての言葉だった。
「ガリアの神々よ、お許し下さい。この私を、罪ある私を」
そう呻くように呟くところに一人の男がやって来た。それはポリオーネであった。
「アダルジーザ、どうしたのだ」
彼は優しい声を彼女にかけてきた。
「そんなに悲しい顔をして」
「お祈りをしておりました」
その美女アダルジーザは俯いたままポリオーネに答えた。
「そしてこのまま祈っていたいのです」
「ガリアの神々にか」
「そうです」
ポリオーネの言葉に対して頷く。
「私達の神に対して」
「私の神は違う」
ポリオーネはここで言った。
「愛の神だ。それだけが私の神だ」
「ヴィーナスがですか」
それは。決してガリアの森には入ってはならない神であった。
「それは私には」
「待ってくれ」
走り去ろうとするアダルジーザを呼び止めた。
「私はそれでも君を」
「どうされるというのですか?祭壇に誓いを立てた私を」
ポリオーネの方を見て問うた。
「どうされるというのですか?」
「私は君だけが欲しいのだ」
それがポリオーネの願いであった。
「君だけが。だから」
「私を。離さないと仰るのですか」
「駄目なのか、それは」
「私にはそれが耐えられないのです」
ポリオーネから顔を背けての言葉であった。
「あまりに。辛くて」
「それはどうしてなのだ」
ポリオーネにはそれはわからなかった。
「何故だ、私を愛しているんじゃないのか」
「それでもです」
アダルジーザは言う。
「かつては幸せで清らかな心だった私」
過去を懐かしむ言葉であった。
「神にお仕えしていて。けれど誓いに背いた今の私はもう」
「ローマでは愛の女神が君を待っている」
ポリオーネはここで自分の神を出して彼女を慰める。
「その神は決して君を見捨てたりはしない。だから」
「来いと仰るのですか」
「君さえいればいいんだ」
ポリオーネの声が熱くなる。
「だから。ここを離れて」
「それは」
「来ないというのか
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