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故郷は青き星
第十九話
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の内で自問自答する。
 クールが格好良い? 馬鹿め。熱く燃えるのがアメリカ人魂だ! と古きよき合衆国に思いを馳せる。
 今回のことはアメリカを再び絶対的な超大国へ復権を果たす絶好のチャンスと捉え、ルーズベルトを蹴落として自分こそがワシントン・リンカーンと肩を並べる偉大な大統領となるために、この交渉を成功させなければならないと決心した。

 2029年時点で、中国はバブルの崩壊以降、急速に高まった反共産党運動により内乱が勃発して国力を大きく落とし未だ立ち直っていない。
 ロシアは2007年の金融危機の影響から立ち直るために、エネルギー資源大国として経済の建て直しを図るも、シェールガス・シェールオイルによりエネルギー資源の価値下落から極東天然資源開発計画の採掘がコストとの折り合いがつかず暗礁に乗り上げてしまった。
 残るBRICS(ブリックス。BRICs:ブラジル・ロシア・インド・中国に南アフリカを加えたもの)の、南アフリカは国としての規模(人口・国土面積)の小ささが枷となり国の発展した小国の枠を超えることは出来ず。インドは未だに残るカースト制度の影が国の発展を妨げる。
 ブラジルは南米の雄として発展を続けるが未だに政治基盤は弱く、その大国としての影響力を世界に発揮するには至らない。
 その一方で、アメリカ合衆国も国際的な影響力を弱めているのも事実で、超大国として世界を牽引する国が存在しないのが現状だった。

 アメリカ合衆国は連盟に対する協力として、国連安全保障理事会の常任理事国と非常任理事国。そして他の主要国の首脳と直接対談し交渉の根回しと仲介を行う。
 それに対して、アルバン大統領は見返りを求めずエルシャンも口にしなかった。
 若いが良い交渉相手だとアルバン大統領は思う。
 交渉事において切り札は最後まで切るべきではない。どこぞの国の政治家や外交官のように最初から手札の全てを場に晒すような間抜けに比べれば、人間としても交渉相手としても信頼出来る。
 国同士の交渉において外交的切り札とはその国が持つ宝。それを安易に使ってしまうと言う事は利敵行為に等しい。
 ましてや交渉前に自国から認められた支援や政治的妥協点を、相手国に対して「僕こんなにお土産持ってきたの褒めて」と尻尾を振りながら喜んで差し出すなど売国奴以外何者でもない。
 今回、エルシャンが我が国に対してなんらかの利益供与を口にしないのは、彼が自分の胸の内を読み切れるほどアメリカ合衆国という国を徹底的に調べ理解してきたと判断する。それどころか彼はアメリカ人が誇りとする「正義」を尊重し、敢えてこちらに与える利益を口にしなかったのでは? 正義の行動とは見返りを求めるものではない。正義の行動とは自らが正しい事をしたという足跡に過ぎない……などと考え、若き異星よりの客人は敬意を払う
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