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ノルマ
第二幕その三

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第二幕その三

「もう一度」
「言わないでっ」
 ノルマはその言葉を拒む。
「あの人が愛しているのは貴女なのよ」
「いえ、あの方は悔やんでいます」
 だがアダルジーザはまだ言う。
「ですから」
「悔やんでいる。では貴女は」
「私もです」
 それアダルジーザも同じだと。他ならぬ彼女が言うのであった。
「確かに愛しておりました」
「ええ」
「けれど今はそれは」
「では貴女は」
 ノルマはまたアダルジーザに対して問う。真剣な顔で。
「貴女のもとに帰ります」
 それがアダルジーザの今の望みであった。それを言うのだった。
「さもなければ」
「さもなければ」
「貴女の前からも神々からもあの方の前からも姿を消します」
「本気なのね」
「はい」
 ノルマの問いに対してこくりと頷くのであった。
「そのつもりです。ですから」
「わかったわ。それじゃあ」
 ノルマはそのアダルジーザの手を取った。そうして言うのだった。
「ノルマ」
「アダルジーザ」
 二人は見詰め合う。それからその二人で言い合う。
「私は心の支えを得たのね」
「私もです」
 見詰め合ったまま話を続ける。今二人はまことの友情を得ていた。
「これからの時間を」
「これからの生命を」
「貴女と共に」
 二人の声が重なり合う。
「この大地は広い」
「そうです」
 重なり合った声がつむぎだされ。完璧な調和となっていた。
「私達の愛を隠す程に大きく」
「そして優しい」
 そのことを感じて心から喜んでもいた。
「貴女と共に励まし合って」
「この数奇な、過酷な運命と戦っていきましょう」
「私の鼓動が止まらない限り」
「私が貴女のこころの鼓動を聞いている限り」
 二人は今完全に一つになった。ノルマがアダルジーザに、アダルジーザがノルマに。それを確かめ合い誓い合うのであった。

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