第五章
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」
「そうなのですな」
「これは槍のことだけではない」
道三はこうも言う。
「他のことでもじゃ。できると思えば」
「できぬことはない」
「左様ですか」
「さて、美しいおなごを手に入れた」
道三はこのことに満足してはいなかった。さらにだった。
「後は何を手に入れようかのう」
「ははは、それは言わぬ約束で」
「そうしましょう」
腹心達だけにわかっていた。道三の本心、これから何を言いたいか。
しかしそれは『今は』言わぬ方がいいし聞かぬ方がいいことだった。それで彼等も己の主にこう言ったのである。
「言うと今は厄介なことになりかねますし」
「我等もまた」
「そうじゃな。言って聞いて見てしまえばな」
どうなるか。道三はそのこともわかっていた。
「それで危うくなるからのう」
「ですから。ここはそういうことで」
「言葉には出さぬ様にしましょう」
彼等はこれ以上は言葉には出さなかった。そのうえでだった。
今は深芳野を手に入れたことで満足するのだった。そして己が信じている者がことを果たせたこともまた。道三はその二つのことを喜びさらにそれからのことも考えるのだった。
蝮の槍 完
2012・8・23
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