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BLONDE
第二章

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「束縛は嫌いなのよ」
「そう言うんだ」
「そういうことでね。ただ」
「ただ?」
「食事。この食事はね」
 二人での最後の食事。それはだと彼に告げた。
「一緒に食べましょう。そうしてね」
「お互いに会わない様にしようっていうんだね」
「安心して。ひっぱたくこともワインを顔にかけることもしないわ」
 私はあくまで大人の女のつもりだ。だから元々怒る方じゃなくてもそうしたことはしないつもりだった。もっと言えば大人の女でいたいからこそ。
 そうしたことはしないつもりだった。それで彼に言ったのだった。
「静かにね。デザートまで食べてね」
「最後にしようか」
「ええ。相手のことも聞かないから」
 聞いても仕方ない。だから聞かないことにした。
「最後にね。食べ終えてね」
「別れようか」
「二度と会わないということでね」
 こう話しだった。私達は二人で最後のディナーを食べた。その中でだ。
 彼は私の髪を見ながらだ。こんなことを言ってきた。
「その髪の毛ともね」
「お別れっていうのね」
「うん。そうなるね」
「そうなの」
「じゃあね」 
 私が相手のことを言わないと言ったからだった。彼も相手のことは言わなかった。
 それで私の髪を見ながらだ。こう言ったのだった。
「その髪も見させてもらうよ」
「見てもいいけれど。止められないから」
「それでもだね」
「未練は感じないわね」
 私はメインディッシュのステーキをフォークとナイフで切りながら彼に問い返した。
「私のこのブロンドを見ても」
「それは」
「未練を感じるのなら止めておいた方がいいわ」
 あえて冷たい感じで。私は彼に告げた。
「私は髪の毛にだけは自信があるから」
「だからだっていうんだね」
「ええ。忠告するわ」
「わかったよ。それじゃあね」
 私の言葉を受けてだった。彼もまた。
 私の髪から視線を外した。それからは淡々とだった。
 ワインを飲みデザートも食べた。それが終わってから彼の方から言ってきた。
「じゃあね。グッドバイ」
「ええ、グッドバイ」
 私はほんの少しだけ微笑んで彼に応えた。
「笑顔で別れましょう」
「笑顔で最後はだね」
「そう。別れましょう」
「わかったよ。じゃあね」
 彼も笑顔になった。そうしてだった。
 私は彼の去っていくその背中を見送った。その間際に。
 彼は背中越しにだ。こう言ってきた。
「そのブロンドは大事にね」
「有り難う」
 私はここでも笑顔で応えた。それで終わりだった。
 それから暫くまた仕事に専念した。その仕事がだった。
 とにかく大変だった。何かとやることがあった。
 そのやることに大変で目が回りそうにもなった。けれどその中で。
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