第一章
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BLONDE
ブロンドの髪、鏡に映るその髪を見て。
私は微笑んでだ。こう鏡の中にいる彼に尋ねた。
「どう思うかしら」
「君の髪かい?」
「ええ。いいでしょ」
こう彼に尋ねた。
「私のこの髪は」
「いいね。いつも通り最高だよ」
「そう言ってくれるのね」
「僕は君の髪を最初に見てね」
そうしてだというのだ。
「一緒になりたいって思ったからね」
「付き合うことにしたのね」
「その見事な金髪をね」
鏡越しに見ながら。また私に言ってくる。
「傍でいつも見たくてね」
「言うわね。髪なのね」
「そうだよ。ずっと見ていたくて」
「いいわ。それじゃあね」
シャワーを浴びて洗った後のシャンプーと香水の香りがするその髪をとぎながら私は彼に言っていく。私もまた鏡を使って彼を見ながら。
「今から行くわ」
「早く来て欲しいね」
彼は鏡の中で笑っていた。私もその彼に笑みを見せて。
それからベッドに向かった。私達はそのまま夜を共にした。
私は顔にはそんなに自信がない。スタイルにも。
けれど髪については別だ。この見事なブロンドは幾ら自慢しても足りない。誰にも負けていないつもりだ。
鮮やかな光沢を放つ長く伸ばした髪をいつも人に見せて仕事をして生きている。彼もその髪をいつも褒めてくれる。私は幸せを感じていた。
その彼にだ。ある日こう言われた。
「君さえよかったらだけれど」
ベッドの中で私の髪をまさぐりながら。彼は私に言ってきた。
「指輪貰ってくれるかな」
「プロポーズということかしら」
「それ以外の何に聞こえるかな」
こう私に言ってくるのだった。
「そのつもりだよ。どうかな」
「そうね。それじゃあね」
微笑んでからだ。私は彼の言葉に答えた。
「今この場でなくてあらためてね」
「時と場所を変えてだね」
「ええ。そうしていいかしら」
「頼むよ。俺だって今はさ」
「勇気を出したのね」
「そのうえでのプロポーズだからね」
彼は私にはっきりと言ってくれた。そうしてだった。
私は彼から婚約指輪を貰うことになった。けれど。
ベッドで話をしてすぐにだった。私も彼も仕事が急に忙しくなった。何から何まで慌しくて休む暇もなかった。それでお互いに会えなくなって。
ある日やっと時間ができたと思った時にだ。彼から連絡が来た。
メールだった。携帯のメールから私にこう言ってきた。
「今度の日曜は暇かな」
安息日に。どうかというのだった。
「俺は大丈夫だけれど」
彼からの言葉だった。その言葉を見て。
私はすぐに返信した。大丈夫だと。
けれどその日も実は仕事があった。だから夜に仕事が終わる時間に待ち合わせをして会うこと
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