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愛の妙薬
第一幕その六
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本当は単なる安物の葡萄酒じゃからな。味は嘘は言っておらぬぞ)
 やはり心の中では全くべつのことを考えていた。
「細かいところまで有り難うございます、それではこれで」
「うむ・・・・・・おっと」
 ドゥルカマーラは一つ言い忘れていたことを思い出した。そしてウキウキとした足取りで立ち去ろうとするネモリーノを慌てて呼び止めた。
「お若いの、お待ちなされ。一つ言い忘れていたことがあった」
「何ですか!?」
 ネモリーノはそれを聞いて立ち止まって振り向いた。
「他の者には黙っておりなされよ。もてる男は妬まれますからな」
「はい、わかりました」
(下手をしたら警察に睨まれるからのう。それだけは避けなければ)
 やはりかなり胡散臭いことをしている負い目であろう。警察だけは怖かった。
「よろしいな」
 そして念を押した。
(どうもこやつは危ない。ここまでの間抜けだとかえって不安になるわい)
 心の中で一言呟くとまたネモリーノに顔を向けた。
「では今日一日は女の群れに注意してな。群がる幸福にお気を着けて」
「あの先生」
 ネモリーノはその言葉に対して言った。
「僕は女の人にもてたいとは思わないのです」
「おや、では何故その薬を」
「はい、この薬は」
 ネモリーノは両手に持つその薬をいとおしそうに見てから言った。
「一人の人の為に飲むんです。僕が想うたった一人の人の為に」
「そうだったのですか(案外いいところがあるのう:)」
 彼は心の中で少し感心した。だが騙すのに罪悪感はなかった。
(明日の朝早くドロンじゃからまいいよいか。この間抜けとはそれでお別れじゃ)
「さて、お若いの」
 何食わぬ顔でネモリーノに声をかける。
「よろしくやりなされよ、その愛しい人と」
「はい!」
 ネモリーノは元気よく答えた。やはり全く疑ってはいなかった。
「ではな。わしは一杯やらせてもらうとしよう」
「では」
「うむ」
 そしてドゥルカマーラは近くにある酒場に向かって行った。そしてその中に入った。
 ネモリーノは一人になった。早速その栓を開けようとする。
「おっとと」
 だがそこでドゥルカマーラに言われたことを思い出した。
「まずはよく振って、と」
 彼が言ったようにまず瓶を振った。
「そしてゆっくりと栓を開ける」
 その中身が何であるか本当に疑わしいと思っていない。そして一口口をつけた。
「おや」
 味わってみて目の色を変えた。
「これは美味い。先生の仰った通りだ」
 そしてゴクゴクと飲みだした。
「美味しいなあ。何か飲んでいると気分がよくなってきたよ」
 酒であるからそれも当然であった。だが彼はやはりそれには気付かない。
「ううん、何だか身体が熱くなってきた。もう効きはじめているな」
 無邪気に薬が
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