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SAO編−白百合の刃−
SAO30-運命の導きに癒す子守唄
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想像以上の速さでこちらに寄ってきているのだ。

「行くわよ!」

 ドウセツが珍しく声を張り、片方の手でスズナを抱え、もう片方の手で私の腕を掴んで安全エリアへと連れて行こうとする。

「行くぜ、イチ!」
「はい!」

 そして同時にイチとエックスは私達のために殿を務め始めた。
 もはや声も意志も届かない。それどころは声すら届いてはいけない。私のやることと言えば、ドウセツとスズナと共に安全エリアへ避難して、転移結晶で『はじまりの街』へ戻るということだけだ。

「……心配する必要はないわ」
「…………」
「あの二人なら連携を上手くできるし、何よりも生き残る戦いを何度も経験してきているのよ。そう簡単にやられない。今はスズナを安全な場所へ避難させることが最優先よ」
「…………うん」

 ドウセツは走りながら私を励ましてくれた。
 確かにイチの耐久力とエックスの火力を合わさった矛と盾のコンビなら、九十層クラスのボスモンスターを倒せなくても、生き残ることはできなくはないはずだ。実力は私もドウセツも知っている。攻略組の人達だって、彼女達の強さだってわかっている。
 だから……大丈夫、だよね?
 そう思って私はふと後ろを振り返ってしまった。
 それは大丈夫であることを確信するためのような確認。二人を信じ切れなかった裏切る行為。
 希望か絶望か。

「!?」

 絶望だった。
 私の考えがどこまでも甘かったと強い痛手をくらってしまった。
 フェイタル・ガイダンスは一体なにをしたのか。何もしていないのか?
 なら、どうしてだ。
 どうして……イチとエックスは宙へとぐるぐる回転しているのだ?
 脳に押しこまれるような焼き付けた視界。あらゆる機能を衰えさせるように、私は不覚にも立ち止まって見てしまう。
 イチとエックスはぐるぐると回転しながら地面に叩きつけられてしまう。幸い、HPは0にはなってないが、それでも絶望なことには変わりはない。イチHPバーは危険信号の黄色く、エックスに至ってはないも同然、0にほぼ近い。それこそ、赤色のバーが微かに認識できるくらいに絶対絶命の状況だった。
 そしてそれをやったフェイタル・ガイダンスは王者の余裕な風格を表すかのように、ゆっくりと私達のところへと近づいて行く。
 考えろ。
 考えるんだ。
 考えることをやめたら、あの時と同じように失ってしまう。
 今私がやるべきこと、そしてそれを実行する勇気と覚悟。
 そして後悔しないという選択。
 目の前には大型の黒い馬であるボスモンスターである、フェイタル・ガイダンス。その後ろには地面に倒れて込んでいる、イチとエックス。私の背にはドウセツとスズナ。
 それを把握して最善の方法。最悪にならない立ち周り。
 …………決まった。

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