第五十七話 武人の心、その意味
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っ、ゼンガーさん!」
「御主は」
「やらせはせぬ!」
ゼンガーはその真っ二つになった剣を携えたままバランに対して叫んだ。
「この若者の命、まだやらせるわけにはいかん!」
「では聞こう」
バランは跳ね返ってきたその鉄球を受け止めながらゼンガーに対して問うた。
「何だ?」
「そのガキの命を救った理由は。何だ」
「希望の為だ」
「希望だと」
「そうだ」
こうバランに答えるのだった。
「希望の為だ」
「解せん」
だがバランは。それを聞いて思わず呟くのだった。
「御主程の男がそのガキを希望だと」
さらに呟く。
「そこまで思うのだ」
「強さは一日にして成らず」
これがバランに対するさらなる答えだった。
「そして」
「そして」
「過ちを繰り返すわけにはいかぬ」
「何だと、それでは」
バランはそれを聞いて察したのだった。
「御主、まさか」
「そうだ、バラン=ドバン」
バランを見据えてまた言う。
「御前も感じた筈だ、この男の秘められた力」
「ふん、それは」
「心を偽る貴様ではないだろう」
否定しようというバランにさらに述べる。
「違うか」
「その通りだ。このバラン=ドバン偽りなぞ言わぬ」
生粋の武人である彼の心からの言葉だった。
「それは誓おうぞ」
「だからだ。これでわかるな」
「むう・・・・・・」
「だが。ただで返すつもりは俺にもない」
「ではどうするというのだ?」
「折れてしまったが」
その手にある斬艦刀を左手に持ちバランに差し出した。
「トウマの生命の代わりにこの斬艦刀を持っていくがいい」
「何と!」
これには流石のバランも驚きの声をあげた。
「武人の魂を差し出すというのか!」
「何ということはない」
しかしゼンガーはそれでも言うのだった。
「一人の若者の為にはな」
「見事だ」
バランはゼンガーのその心を知り言うのだった。
「地球に御主程の者がいるとは。思いもよらなかったわ」
「折れているがな」
「その様なことは問題ではない」
バランも言う。
「御主の心を受けるのだからな」
「そうか」
「折れたものは心ではない」
バランが言うのはそれだった。
「地に伏してもまた立てればいい」
「そうなのか」
「しかしだ」
バランの言葉は続く。
「御主の心は決して地に伏してはおらぬ。わしにそれを貸すのか!」
「その通り!」
ゼンガーは叫んだ。
「命の炎、消させるわけにはいかぬ!」
「よし!」
バランもその心を受けた。
「御主の心、受けよう!」
「受けるかバラン=ドバン!」
「小童の命と御主の剣貸しにしておく」
「バルマーにも貴様のような漢がいるとはな」
「それはこちらの台詞よ」
ニヤリと笑ってゼンガーに告げる。
「地球も捨てたものではない
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