第五十七話 武人の心、その意味
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「ちずるさんも可哀想」
「何でそこでちずるなんだよ」
二人にまた言われてもわかっていなかった。
「おい、どうしてなんだよ」
「豹馬」
また左手で頬杖になって憮然としながらもちずるは豹馬に声をかけてきた。
「何だよ」
「・・・・・・ここのお店って凄いらしいのよ」
「すげえって何がだよ。確かにサンドイッチもコーヒーも美味いけれどよ」
「だから。縁結びなのよ」
「ふうん、そうなのか」
「・・・・・・どうしたらわかるのかしら、本当に」
「普通誰でもわかるけれど」
「豹馬君もマサキ君も。うちの男は」
ナナとマリもぼやく。マリはこの時チラリと洸を見たがそれは内緒であった。
喫茶店でちずるがぼやいているその時。さっきのショートヘアの女の子は街の噴水のところにいた。プラハの美しい街並みと実に絵になる。その彼女のところにコートの緑の髪の青年が来た。
「あっ、ロゼ」
「マーグ司令・・・・・・あっ」
口に出してすぐにその口を両手で覆った。それからマーグに謝罪する。
「すいません、つい」
「ここでは司令ではないよ」
マーグはにこりと笑ってロゼに告げた。
「マーグでいいから」
「けれどそれでは」
呼び捨ては憚れるのだった。
「あまりにも失礼です」
「じゃあどうするの?」
「ええとですね」
少し考えてから答えた。
「さん付けでいいでしょうか」
「さん付け?」
「はい、マーグさんで宜しいでしょうか」
マーグを見上げて問う。
「それで。どうでしょうか」
「そうだね。じゃあそれで」
「宜しいのですね」
「うん、じゃあロゼ」
「マーグさん」
互いに呼び合ってみる。その感触は。
「悪くないね」
「そうですか」
「じゃあ。行くとしよう」
「はい」
あらためてマーグの言葉に頷く。
「御願いします」
「それはそうとしてロゼ」
「何でしょうか」
「バラン様は何処に行かれたのだろうか」
怪訝な顔をしてロゼに尋ねるのだった。
「バラン様ですか」
「うん。見なかったかい?」
「いえ」
マーグの言葉に対して首を横に振る。
「そういえば。外に出られていますよね」
「うん。そうだけれど」
「もしかしたら道に迷っておられるとかは」
「有り得るね、それは」
ロゼの言葉に顔を曇らせた。
「バラン様はあれで方向音痴だから」
「この様な敵地でそれは」
「危険だ。偵察どころじゃない」
「そうです。何としてもバラン様をお探ししましょう」
「そうだ。では行こう」
「はい」
こうして二人は本来の任務よりもバランを捜すことにしたのだった。その時彼等はある者達と擦れ違ったことに気付かなかった。
「んっ!?あの二人」
「どうした、ミゲル」
ハイネがミゲルに問うた。
「いや、何処かで見た感じがしたが」
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