第4話 ゲーム
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それまで、周囲を飛び回りながら、俺と長門のやり取りを黙って聞いていた風の精霊シルフが、そう割り込んで来たのだ。
今日と明日の間。ちょうど狭間の時間に相応しい不吉な内容を、妙に明るい雰囲気の少女の声で。
「無理って、何が無理なんや、シルフ」
風に舞う乙女に対して、そう質問を返す俺。……なのですが。ただ、実は彼女が無理だと言う理由に、ひとつ思い当たる理由が存在するのですが……。
そしてそれは、俺に取っては非常に辛い現実を指し示す答え、と成る事が確実な答えでも有ります。
出来る事ならば、俺の考えて居るその理由が、俺の単なる杞憂に過ぎない内容で有る事を望みながら……。
しかし……。
「だって、シノブの置いた指標がひとつも無いんだもの。指標が無かったら、何処にも跳ぶ事は出来ないよ」
あっけらかんとした、妙に能天気な雰囲気で俺の問いに答えるシルフ。但し、彼女の口調、及び雰囲気からは想像も付かないのですが、俺に取ってその答えは、矢張り、非常に深刻な内容の答えでも有りました。
俺は、長門有希と名乗った少女と、シルフを順番に見つめる。そして、少し大きく息を吸い込んだ後、嘆息するかのように、肺に残ったすべての空気を吐き出した。
そして再び、長門有希と名乗った少女へと視線を戻し、
「長門さん。もし俺が異世界の人間だと言ったら、信用してくれるかな」
……と、酷く疲れた者の口調で、そう問い掛けたのでした。
瞬間、微妙な空白が室内を満たす。
外界の喧騒から隔絶され、一切の余計な雑音が存在しない室内に流れる俺のあまりにも突拍子のない発言。初見の相手。ここまでで示して来た能力から考えても、俄かに信じる事の出来ない内容。これでは、流石の長門も呆れて二の句が継げないのか、メガネ越しのやや冷たい視線が俺の心の非常にナイーヴな部分を貫いた。
しかし、次の瞬間。長門はひとつ、首を縦に振る。これは、間違いなく肯定。
つまりこれは、俺の言葉を、彼女に信じて貰えたと言う事なのでしょうか。
「それならば、一応、説明だけして置くな」
割と簡単に信用して貰えた事で、心が軽く成ったのは確か。そして、流石にそんな相手には、多少の情報開示は必要でしょう。
そう考えた後、何故、ここが元々、俺が暮らしていた世界ではないと確信出来たのかの説明を始める。
少し俺を見つめてから、首肯く長門。陰と陽。どちらとも感じる微妙な気を発しているけど、彼女が興味を持ってくれているのは間違いがないように思います。
「俺の転移魔法は、一度、俺自身が行った事の有る場所になら、間違いなく転移出来る魔法」
俺の声のみが、蛍光灯の明かりに因って夜の世界から護られた
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