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Fate/stay night -the last fencer-
第一部
運命の夜の先へ
狂躁の夜を越えて(U)
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うな発言は二度とするなよ、フェンサー」
「……了解、マスター」

 やれやれ、といった風情でフェンサーは肩を竦める。

 コップを空にした俺は、部屋の奥にある金庫から購入証明書やら契約書類なんかを引っ張り出す。
 そんな作業がてら、先ほどの話は打ち切ったつもりだったのに、思わず考えていたことが口を突いて出る。

「そもそも、凛が俺を好きになるはずもないだろう」

 そう。魔術師云々以前に、もとよりそこが重要だ。

 長年コミュニケーションを取ってきたつもりだが、凛からそれっぽい反応を返されたことはない。
 俺もそれを分かっているから他の女の子と付き合ったりしていたし、その経験から手応え……というか、脈ありならそれとなく解る。

「マスター……それ本気で言ってる?」
「本気も何も、普段接してる中での素直な意見だって。どっかのドラマの主人公みたいに超絶鈍感なわけでもなし、俺も脈無しの相手にモーションかけるほど暇じゃあない」



(知らぬは本人たちばかりなり……重症ね、コレ。二人とも潜在的に相手のことを気にしてるのがわかってない)



 彼らと会ってまだ間もないフェンサーだが、昨日から今日まで接してきた上での分析だ。
 二人はお互い、相手に他人とは違う特別性を見出しているのに、無意識なものだからそれを自覚することが無い。

 それは二人の言動の節々を見ていれば解ることだった。

 もしも彼、彼女の内面に変化が起きるとしたら、それは何か劇的な事件でもない限り不可能だろう。
 もしくはどちらかが気付いてじっくりとアプローチを掛けるか、この関係のままで年月を隔てれば気付くこともあるかもしれない。

 それとも他にもう一人特別な人間が出来て、それと比較するようなことでもあれば、また価値観に変化が訪れるはずだ。

「よし、これで全部。フェンサー、新都に向かおう」
「了解……」

 何故自分(サーヴァント)がこんなことを考えているのだろうと嘆息し、フェンサーは己のマスターの後に付いていった。

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