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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
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第四話「急転」
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に反応したのではないだろうが、瓦礫を吹き飛ばして亜愛が迫ってきた。
無言で俺の胴を目掛けて手刀を振るう。しゃがんで回避すると、顔面に膝が飛んできた。上体を反らしてこれも避わす。
「――! もう避けられない!」
殺った! という言葉とともに必殺の手刀が降り下ろされた。確かに今の姿勢では死に体のため、普通なら身動きが取れないだろう。
――しかし、この体はここからさらに移動する術を知っている。
腰や脇腹の筋肉に意識を集中させ、重心が存在するエリアごと前方に移動。さらに普段日常で使っていない筋肉を始動させて回避に専念する。
そうすることで、
「なっ――」
意のままに体を動かすことができる。
亜愛の脇の下を通り背後に回った俺は右手を後頭部に、左手を腰に押し当てた。漸く見つけた隙だ、決して無駄にはしない……!
「ふんっ」
右手から魔力を流し、亜愛の中で循環させる。循環した魔力は俺の左手へと還り、再び俺の右手から魔力が流される。
「くっ!」
後ろ蹴りをスウェーで躱し、後方に跳躍。施行できた時間は一秒だが、それでも十分だ。
再び手刀を構えた亞愛が凶刃を振るう。
「――! なんで……!?」
しかし、横薙ぎに振るわれた手刀は俺の腕によって弾かれた。
バックステップで距離を取った亞愛は困惑した顔を浮かべていた。
「なにを、したの……?」
「俺の魔力を流し循環させることで亞愛の妖力を乱した。どういった原理かは知らんが、個人により魔力や妖力の循環速度やリズムは違うらしい。これを崩されると魔力は乱れ、魔術が使えなくなるんだ。妖術も然りだ」
――これで、次元刀は使えない。
「形勢逆転だな。次元刀とやらが使えない今では俺に勝つことは不可能なのは、亞愛自身もよく分かっているだろう?」
「……ッ」
悔しそうに顔を歪ませる亞愛の元に近寄る。お袋もこちらに駆け寄っているから、このまま家族会議といこうか。
そう、思っていた時だった。
「ど、どうなっているのこれ……? なんでお母さんが血だらけなの?」
「――!」
この場にいるはずのない声が聞こえてきた。振り返ると、呆然と佇む萌香の姿がある。
「萌香……」
「あの馬鹿者っ」
「どうして戻ってきたの!? 来ちゃだめっ!」
苦虫を噛み潰す俺を余所に、お袋が叫ぶ。
「なんなのこれ! もしかして、姉さんがやったの!? ひどいよ!」
萌香の一言に天を仰ぎ苦悩の表情を見せる亞愛。
「お母さん!」
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