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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
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第四話「急転」
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手刀を構えた亜愛が地を這うように駆ける。心の中にあるスイッチを全て入れた俺は限界にまで強化した足でお袋を抱えて跳躍した。
下段から振り抜かれた手刀が床を易々と切り裂く。やはり、あの次元刀とやらが厄介だな。
入り口付近に着地した俺はお袋に訊ねる。
「お袋、さっき術って言ったよな? あれは魔術なのか……?」
「いいえ、妖術よ。自らの妖力を媒介に自身の次元をずらす技だって聞いたわ」
なるほど、妖力を媒介にした術なら対処の仕様がある。ただ、その隙をどうやって作るかだな。
「……難しいが、やってみるか」
「――? 千夜、あなた何を……?」
「ちょっとやんちゃな妹に灸を据えてくる。兄としては親子での殺し合いだなんて黙認できないからな。お袋はここにいてくれ」
「あっ、ちょっと千夜!」
こちらを静かに見つめる亜愛のもとに歩み寄る。両者の距離は十メートル。互いに一息で潰せる間合いだ。
「もうお話はいいのかしら?」
「ああ、待たせたなかな?」
「いいえ。どうせすぐに死ぬんだもの。少しくらい待っても構わないわ」
「生憎こちらは死ぬ予定はないな。少しやんちゃが過ぎるから兄の教育的指導を受けさせないと。その後で家族会議だ」
「……まだ、私のことを家族だと?」
「当然だ。お前が何をたくらんでいようと俺の可愛い妹だよ。今はちょっと迷子になっているようだけどな」
「……」
無表情でこちらを見据える亜愛を真っ直ぐ見つめる。そういえば、亜愛には俺の本気を見せたことがなかったな。
半身の姿勢になった俺は
「来な。久々に稽古をつけてやる。『殲滅鬼』の力を肌で体験させてやろう」
「……後悔させてあげる」
手刀を構える亜愛。先に動いたのは亜愛からだった。
「ふっ」
先程よりも鋭い駆け出し。瞬く間に懐に入り込んだ亜愛は低姿勢から延び上がりながら首に抜き手を放ってくる。
首を傾けて回避した俺は転身しながら重心を落とし、足払いをかける。
「……ッ、百刃繚乱!」
咄嗟に跳んで転倒を免れた亜愛は空中から真空の刃を飛ばしてきた。だがそれは――、
「一度見たよ」
その技は一秒間の溜めが必要だ。一秒もあれば亜愛の背後に回り込むなど容易い。
「くっ――」
「対応が遅い」
無防備な背中を蹴りつける。身体強化の魔術によって強化された脚力は亜愛を難なく蹴り飛ばした。轟音とともに床を跳ね、壁に激突する。
「どうした? まさかこの程度ではないだろう?」
その言葉
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