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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
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第四話「急転」
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いた。
――こいつはヤバイ!
「百刃繚乱!」
振るった両腕から真空の刃が放たれる。天井の隅に張りついていた俺は慌てて壁を蹴ってお袋の元に跳んだ。
轟音とともにホールの一帯が破壊され、衝撃で窓ガラスが割れる。亞愛はこちらを鋭い目で睨んでいた。
「あなた……」
「ん〜、どうして兄様がここにいるのかな?」
呆然とこちらを見つめるお袋を腕から降ろし、服に着いた埃を払いながら立ち上がる。
「今回の萌香の件はどうもおかしいと思っていたから、お袋の元に向かったんだ。そうしたら、まさかのカミングアウトに戦闘だ。兄としてはどう対応すればいいのやらだな」
肩を竦める俺に亞愛がさらに目を細めた。
「ということは、すべて――」
「聞いていたし、見ていたよ」
そう言うと、亞愛は額に手を当てて天を仰いだ。
「あや〜、これは流石に予想外ね。『暗殺者』とも言われた兄様をもう少し警戒するべきだったわね。……知られちゃったことだし、兄様には悪いけどここでアカーシャさんと一緒に死んでもらうわ」
「――! 待ちなさい! 私はともかく、千夜を巻き込まないで!」
「それは無理よ。私の正体も知ってしまったんだし、ここで殺すしかないわ」
「あなたの兄なのよ!?」
「でも人間よ。さっき言ったでしょ? 人間は嫌いだって」
冷たい目でこちらを見据える亞愛に俺は微笑んだ。
「俺は亞愛のこと好きだぞ?」
亞愛とお袋が驚いた目で俺を見た。
「……私は兄様を殺そうとしているのよ? それでよくそんなことが言えるものね」
「亞愛が俺を嫌っているなんて、この際関係ない。妹を嫌う兄なんているものか」
「理解に苦しむわ」
「俺は今のお前の方が苦しそうだがな」
顔を歪ませてこちらを睨む亞愛は俺には強がっているようにしか見えなかった。妹のたくらみを知った今でも、やはり彼女を嫌うことなんて出来そうにない。
「……亞愛、あなたは自分で思っている程、冷徹な娘じゃないわ。あなたのほどの腕前とその次元刀があれば、私に今以上のダメージを与えられたはず。母親の私には分かるわ」
「なっ……傷が治癒していく!?」
肩口と胸部の傷を修復するお袋。その回復速度は普通のバンパイアと比べて異常な高さだ。
「辛かったら止めてもいいのよ、亞愛……」
一瞬、苦しそうに顔を歪ませる亞愛。しかし、次の瞬間には無表情を張りつけた。氷のような雰囲気を漂わせて。
「――もうじゃれ合いはここまでにしましょう。アカーシャさんとともに死になさい!」
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