壱ノ巻
青の炎
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あれから、どのくらいたったのかわからない。夜が来て、朝が来て、再び夜が来て、また朝が来た。それが幾度巡ったのか、時間の感覚もなにもかもが俺を置いて通り過ぎていたように感じられた。
ただ、確かなのは瞼裏に時折閃く青の炎。
若は、時間が出来ると俺のところに来て、心配していろいろと声をかける。
「おい、お前、前田家に行ってからおかしいぞ。で、残りの二人をどうする?聞いてるか?速穂?」
頬を叩く若の手さえ、夢の中のようなもの。
「おい、速穂ー…?」
その日も、若の声がぼんやりと耳に届いて、俺はのろのろと視線だけで若を探した。
「決めた。館に火をかける。そうすれば、二人一度に殺せるし、誰がやったかもわからないだろう?」
火を、館に、かける…。館に…?
誰の…。
その日、久しぶりに夢を見た。
「あたしを殺すの?」
伏せられたその瞳の奥には、常に憎悪の青の炎が燻っている。
「瑠螺蔚…」
「あんたに名なんて呼ばれたくない」
声が喉の奥に詰まる。
「人殺し」
「違う、瑠螺蔚、違う…。俺は、俺は、お前を殺すつもりは無かったんだ…」
「何が違うの?母上と姉上を斬ったのは誰?あんたじゃないの?」
「…………俺だ」
そうだ俺だ。俺が殺したのだ。瑠螺蔚の母も、姉も、そして瑠螺蔚も。
「……瑠螺蔚……」
俺は泣きたい思いで呟いた。
もう、俺はこれからどうして行けばいいのか。
わからない。なにもわからない。
「発六郎」
そっと瑠螺蔚が呟いた。
「父上と、兄上を助けて」
その頬に透明な雫が伝った。一瞬俺はそれに見惚れる。
純粋で綺麗な涙。
「ねぇ、発六郎!お願いだから、父上と兄上を助けて!」
瑠螺蔚が俺を見た。その瞳に青の炎は映っていない。
「お願いよ、発六郎!あたしじゃ助けられない!だから…」
それは殆ど悲鳴に近かった。
「瑠螺蔚、だがそんなことをすれば、俺は村雨家にいられなくなる」
「なら前田家に来るといい。新しい家を、家族をあげる。新しい名をあげる。あんたは自分の真名を知らないんでしょう?なら、速穂児と名乗るといいわ」
俺は微かに微笑んだ。
「それでは今と大
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