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ソードアート・オンライン ーBind Heartー
黒と白そして青
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ど多くない。というよりこの状況では一人しかいない。
俺の後ろを見てぎょっと目を剥いているトーヤを無視して、左肩に触れたままの相手の手を素早く掴むと、振り向きざまにいう。

「シェフ捕獲」

「な……なによ」

相手は俺に手を掴まれたままいぶかしげな顔で後ずさった。
栗色の長いストレートヘアの、十人が十人振り向くであろうほどの美少女。そのすらりとした体を、白と赤を基調とした騎士風の戦闘服に包み、白革の剣帯に吊るされたのは優雅な白銀の細剣。
そしてすぐに、トーヤの震えるおおごえが狭い店内に響く。

「け、け……血盟騎士団の、アスナさん!?」

その声に彼女はまた小さく後ずさる。
そう。彼女の名はアスナ。SAO内では知らぬ者はほとんどいないであろう有名人だ。
その理由としては、文句のつけようがない華麗な容姿もそうだが、純白と真紅に彩られたその騎士服ーーギルド≪血盟騎士団≫のユニフォームにもある。≪Knight of Blood≫の頭文字を取ってKoBとも呼ばれるそれは、アインクラッドに数多あるギルドの内でも、誰もが認める最強のプレイヤーギルドである。
アスナは可憐な少女の外見とは裏腹に、そのギルドにおいて副団長を務めている。当然、剣技のほうも半端ではなく、細剣術は≪閃光≫の異名を取る腕前だ。
その≪閃光≫様の数歩引いた位置に白のマントと分厚い金属鎧に身を固めた護衛役のKoBメンバーとおぼしきふたりの男が立ち、その右側の、長髪を後ろで束ねた痩せた男が、アスナの手を掴んだままの俺に殺意に満ちた視線を向けている。
俺は彼女の手を離し、指をその男に向かってひらひら振る。ついでに、今にも騒ぎ出しそうなトーヤの眼前に掌を突き出してそれを制した。

「こいつは気にしなくていいから。珍しいな、アスナ。こんなゴミ溜めに顔を出すなんて」

俺がアスナを呼び捨てにするのを聞いた長髪の男と、自分の店をゴミ溜め呼ばわりされた店主の顔が同時にぴくぴくと引きつる。
その内でトーヤだけは、まだ魚のようにぱくぱくと口を開けたり閉じたりしていた。そんなに驚いたのか。

「なによ。もうすぐ次のボス攻略だから、ちゃんと生きてるか確認に来てあげたんじゃない」

「フレンドリストに登録してんだから、それくらい判るだろ。そもそもマップでフレンド追跡したからここに来られたんじゃないのか」

唇を尖らせたアスナにそう言い返すと、ぷいっと顔をそむけてしまう。

「生きてるならいいのよ。そ……そんなことより、何よシェフどうこうって?」

「あ、そうだった。お前いま、料理スキルの熟練度どのへん?」

確かアスナは酔狂にも、戦闘スキル修行の合い間を縫って職人系の料理スキルを上げていた覚えがある。俺の問いに、彼女は不敵な笑みを滲ませると答えた。


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